工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

【漫画】ザ・ファブル(10) 感想

【前:第九巻】【第一巻】【次:第十一巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

プロやからな――

情報

作者:南勝久

試し読み:ザ・ファブル (10)

ざっくりあらすじ

ターゲットにされた貝沼悦司を追い詰める証拠が集まっていく中、その計画にファブルこと佐藤も組み込まれていく。そのことに気付かないまま、ファブルという都市伝説上の殺し屋も同時に追っていくが――。

感想などなど

ファブルは都市伝説で語られるような殺し屋だ。そもそも本当に存在しているのかすら怪しいとされ、小島とミサキのデリヘル騒動がなければ、砂川も存在を知らなかったと思われる。

しかし、一度その存在を知ってしまえば、「仲間に引き込みたい」「戦ってみたい」「弟子になりたい」と思ってしまうようなカリスマ性が、そのファブルという名前にはある。

そのカリスマに惹かれた男の一人が砂川である。この間の砂川との一件に水を差されたような形で、ファブルという存在に関わってしまった。このファブルと繋がるためには、組で成り上がっていくしかない……こうして彼が若頭を狙う理由ができてしまった訳だ。彼が今後、どのようにファブルと関わっていくのか? 裏社会で生きてきたことによるネジの外れ具合が、どのようにファブルの日常を脅かすのかは今後に期待しておこう。

大平宇津帆もまた、ファブルという殺し屋に興味を示した人間の一人だ。なんとこの男、かつてファブルのターゲットにされながら生き残ったという経歴の持ち主なのだ。ファブルの猛攻から逃げ延びたとかではなく、ファブルが彼を殺すまえに依頼が取り下げられたから……つまりは悪運が異様に強いから、生きているのだが。

そんな一命を取り留めた彼は今、表では子供の安全を第一に考える保護者の味方であり、裏ではそうして徹底的に甘やかした子供達から、騙して殺して金を巻き上げる犯罪者である。そのターゲットに選ばれたのが、ミサキのストーカー貝沼悦司であった。

レ〇プまでしようとしたこの男を擁護する気はさらさらないし、どうしようもない屑だと本心から思う。ただでさえ下がっている彼の株は、この第十巻で下がるところまで下がる。

 

大平宇津帆が貝沼から金を巻き上げる作戦はこうだ。

まず貝沼がミサキをストーカーしている証拠を集める。これはとても簡単な仕事であった。臆病で繊細なようで、自身が犯している犯罪に対する警戒心は薄い。彼が仕掛けた監視カメラには、彼自身がカメラを仕掛けている映像がばっちり残っているし、彼の家を調べればいくらでも映像や写真があることだろう。

その証拠を元に、訴訟をチラつかせる。方法は幾らでも思いつくが、今回はミサキを復帰させようとする芸能事務所が、貝沼を訴えるというストーリーを進めることにした。貝沼の母親を呼びつけ、息子がどのような犯罪をしたかを語り(これ事態は事実である)、訴訟しようとしている考えを伝え、しかし示談することもできるとして支払いを求める。

息子がストーカーをしているということ事態は嘘ではない。証拠も幾らでも出せる。実際にミサキは芸能事務所に復帰するようなストーリーはないし、大平宇津帆が連れてきた芸能事務所の人間は嘘だが、これは騙される。

これまでもこうして金を巻き上げてきたのだろう。

しかし、この程度で満足はしない。貝沼はどうしようもない人間だ。もう落ちるところまで落ちたと思っていたら、さらにそこまで勝手に落ちていく。大平宇津帆が好きな人間はそういう男なのだろう。

ファブルの平穏な日常も、それにより慌ただしくなっていくことは言うまでもない。ラストの衝撃展開――きっとこういう行動に走る人間は少なくないのだろうという妙な諦めが生まれた。

もしかしたら、貝沼という男に更生するという展開を少しは期待していたのかもしれない。それはもう無理だ。ここから落ちるところまで落ちていく様を、これからは見ていこうと思う。

【前:第九巻】【第一巻】【次:第十一巻
作品リスト