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【漫画】ザ・ファブル(9) 感想

【前:第八巻】【第一巻】【次:第十巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

プロやからな――

情報

作者:南勝久

試し読み:ザ・ファブル (9)

ざっくりあらすじ

興信所に偽装して、金持ちの子供から金を巻き上げる――そんな仕事を十五年前から計画し実行に移していた大平宇津帆。大胆不敵なその計画に、ミサキのストーカーをしている貝沼悦司がターゲットにされる。

感想などなど

熊と戦った山ごもりも終わり、ヨウコとユウキの対決も終わった。それぞれファブル組が完封勝ちといったところか。真黒組の下っ端・クロも、今回の経験を経て大きく成長した……ということにしておこう。

第八巻はいわば閑話休題的な内容であった。平和は戦争のない期間に過ぎないというが、その裏では犯罪者達が金のために、あくせく罪を積み重ねている。そんな犯罪者の一人が、大平宇津帆という男だ。

彼の冒している犯罪は、それはそれはあくどい。

世間には親に甘やかされて育てられた子供がたくさんいる。とくに親が金持ちだった場合、好きなものは何でも買って貰え、あらゆる自由が保障された幼少期を過ごすことだろう。そして世界は自分を中心に回っている、自分の思い通りにいかないことが許せない子供のような大人へと成長する。

そんな大人の贅沢や浪費につけ込んで、あらゆる手口を使って金を貪る……それがこの大平という男がしている金儲けだ。第九巻では、好きなだけ金を搾取した若者を、「一千万を持って海外に自分捜しに出かけた」という話をでっち上げ、山奥に生き埋めにした話が描かれる。

猿ぐつわを嵌められ、掘られた穴の中にいるその男は、くぐもった声を上げて助けを求める。しかし、大平はそんな若者を「大好きだよ」と言いながらユンボで土を被せてそのまま埋めている。

正しく畜生。

小島は簡単に人を殺す人間だったが、彼は利用して搾り取れるだけ搾り取ってから殺す――つまりは簡単には殺さない男だった。

そんな男のターゲットになったのが、ミサキをストーカーしている男・貝沼悦司であった。

 

ミサキは元グラビアアイドルで、実家の都合で借金返済のために働く女の子だ。将来の夢は自分の店を持つことで、そのために地道な努力をする彼女のことが嫌いになる読者はいないだろう。殺し屋ファブルもまた、鼻血を出している時に唯一助けてくれた彼女を、バイトを紹介してくれた彼女のことを、守りたいと思ったからこそ襲撃事件を起こしたことは言うまでもない。

そんな彼女のストーカーをしている貝沼悦司は、良い具合に気持ち悪い。彼ほどグへへという笑みが似合うキャラクターは中々いない。職場でも女性を盗撮するチャンスを常に窺っている思考回路が、人としての道を踏み外している感じが最高に最低な変態である。

そんな貝沼を次なる搾取のターゲットに決めた大平。彼の趣味や生活についてを徹底的に調査することで、金をゆすることができる取っ掛かりを探そうという訳だ。読者としては「ストーカーしてるし、いくらでも叩けば埃が出るだろうな」という風に先の展開が予想できる。

盗撮カメラや盗聴器を仕掛け、合鍵まで準備しているこの男の資金はきっと、金持ちの両親から来ているのだろう。その辺りをつつけば、貝沼はどこまで金を出すのか……ふむ、何だか楽しみになってきた。

そんな捜査の手が及んでいることも知らず、貝沼はストーカーとしての行動をさらに加速させていく。いよいよ彼女を無理矢理にでも手込めにしようと動き出したのだ。「スタンガンで気絶させてヤッちゃえばいいやん――」という彼の思考は、やっぱり終わっている。何が良いのか、全く分からない。

そんな中、ファブルは幸せそうに好きな芸人のドラマを見ている。そっちのドラマも佳境に入ったらしく、「先っぽだけでも」と無様にお願いしている様が放映されていた。面白そう、是非ともリアルでも放映して欲しい。

 

この第九巻はいわゆる新章の始まりである。まだファブルと大平はエンカウントしていないが、このまま行くと巻き込まれていく未来がありありと想像できた。さて、どうなることやら。気色悪さと気味悪さがカンストした第九巻であった。

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