※ネタバレをしないように書いています。
プロやからな――
情報
作者:南勝久
試し読み:ザ・ファブル (4)
ざっくりあらすじ
バイトの世話をしてくれた元グラドルのミサキに、ヤクザ絡みの危険が迫っていることに気付いたファブル。彼女のために、殺しを封じられた最強の殺し屋に何ができるのか――。
感想などなど
最強の殺し屋・ファブルが格安時給のバイトに精を出し、一般人に溶け込んでいる中、その背後では色々な思惑が蠢き、次々と事件が発生していた。その様子が、この第四巻では描かれていく。
例えば。
若頭・海老原が不整脈で入院。心筋梗塞の疑いがあるらしい。それにより、首輪が外れてしまった小島は、止められていた仕事に次々と手を出していく。まずは拳銃を購入し、それを使ってかつて300万を貸した先輩を脅して殺害。やりたい放題である。
それがきっかけとして、同じ組の砂川という男に目を付けられ、組内の騒動に繋がりそうな気配を感じさせる。これから先、組は騒がしくなるであろう。
まぁ、ヤクザの世界なのだから、そんなことが行われていたとしても違和感はない。
ただ平和な日常が広がっているはずのファブルのバイト先も不穏さが漂っている。
ミサキを盗撮しストーキングする男は、今日も変わらずカメラを仕掛け、家に帰れば自家発電に励むに違いない。その上、彼女が元グラドルということも知ってしまった彼が、彼女に対して今後どんな行動に出るのか? あまり想像したくない。
と思っていたら、「一発くらいヤラせてくれるかもなぁ――」などと言いやがった。その時、口から涎が糸引いて垂れているのが気持ち悪さの演出として、機能し過ぎている。本当に気持ち悪い――。
不幸な身の上であるミサキに忍びよる魔の手は、それだけではない。
小島は禁止されていた風俗に手を出そうと、これまで以上に危ない橋を渡り、金と女を集め始めた。そのターゲットとされたのがミサキだったのだ。
……と物語の表と裏の物語が一気に展開する。そのテンポが恐ろしまでに早い。人が死ぬのは銃弾一発と一瞬で、人が上から落ちてくることは当たり前。それを平然と受け入れ、仕事として処理していく面々のメンタルの異常さが浮き彫りになる。
それに引き換え平和な世界……ファブルはジャッカルの出演してるドラマを堪能しているし、ヨウコはアル急寸前の男を好き勝手に弄びたいということでバーに単身乗り込んだ。
まだまだファブルは事件に絡んでこない。
屋上でいわしを焼き、大根おろしに醤油をかけて、明日の仕事のことを心配し、時給アップに喜ぶ、そんな普通さを手に入れつつある彼であったが、これから先も平和な日々を送ることができるのだろうか? ただただ不安しか感じない危険さが、そこら中に満ちている。
時折、ミサキに鍵を交換するように助言したり、彼女を捉えるカメラをずらしたりと、彼なりに助けてくれているようだが、それでは足りないレベルでやってくる悪意。読み終えた後、いざ状況を整理して感想を書いている今、そのヤバさを再認識している。
これから先、ファブルはどのように事件に絡んで来るのか?
ミサキは平和を手に入れることができるのか?
先が気になる余韻を残して、幕を閉じていく。笑いあり、緊張ありの第四巻であった。