※ネタバレをしないように書いています。
プロやからな――
情報
作者:南勝久
試し読み:ザ・ファブル (6)
ざっくりあらすじ
砂川と小島がバチバチの睨み合いをしている中、デリヘルで働く契約をさせられてしまったミサキ救出のために、拳銃を自作して、敵本拠地に乗り込んだファブル。そんな救出作戦の結末は――。
感想などなど
ここまでが長かった――これからザ・ファブルを読むという方は、この第六巻(できれば第七巻)まで購入して読むことを進めたい。第五巻までの小島の暴れっぷり、砂川が小島の暴れっぷりを察して行動を開始、さらにミサキちゃんの危機を察したファブルの調査開始、それら全てが終結するのが、この第六巻である。
とまぁ、ざっくりとした話では何も伝わらないであろう。もう少しだけ状況を整理しておこう。
まず小島は殺人でムショに入っていて、最近になって出所してきたばかりのヤクザだ。彼は若頭との約束を破り、デリヘルで金を稼ごうとしていた。そのために、ここら一帯のデリヘル業務を担っていた男を殺害。海外に飛んだかのように小細工まで仕込んだ。
そのことを知った砂川。彼こそが小島が殺した男の上司であり、自分の島を荒らした小島に対して怒りを露わにした。そのことは頭にまで相談したが、小島が殺人をしたという確固たる証拠がないと動けないと言われ、彼は小島を殺すことを決めた。
その殺しを決めるまでの流れがあっさりとし過ぎていて、ここはヤクザの世界であるということを認識させられる。また、デリヘルを始めるために、女――つまりはミサキちゃんではあるが、彼女を脅迫までしてしまった小島。
おそらく、ここが彼の失策である。
ミサキちゃんはファブルの恩人なのである。
砂川は小島と冷静な商談を進めるように見せかけて、彼を殺す計画を立てていた。そのために裏社会の何でも屋に金を払っている。一方、小島はデリヘル業の準備を着々と進めつつ、砂川のことは邪魔だと感じているようだ。
彼自身、平気で殺人を行えるような人間である。殺人による快感と、性行為による快感の共通点を語っていたシーンが懐かしい。人殺し特有の価値観、人を殺すまでの壁の薄さ、どれをとっても異常者というレッテルが相応しい。
そんな両者はとある廃工場で話をつけることとなった。そこにはデリヘルで働く第一従業員――ミサキちゃんも連れ込まれ、最初の仕事が行われる予定だった。
そんなこと、ファブルが黙っているはずもない。自作で拳銃を作り、GPS付きの腕時計を忍ばせ、その他煙幕なども準備し、砂川と小島というヤクザのヤベー奴らが集まった廃工場へと潜入していく。
ここがまた面白い。スカッとする快感があるというのも当然として、ファブル本人としては真面目にやっているのだろうが、どこかおとぼけ感のある仕事風景に、読者としては興奮が高まるのだ。
この第六巻はそんな救出劇の途中で終わる。途中とはいっても、この第六巻という短い時間――作中の時間はほとんど経っていないと思われる――に全員が無力化されるという衝撃の早業、伝説の所業を目の当たりにすることとなる。もう勝ち確定である。
やすりで指紋を削って消すとか、釣りの重りで弾作れるんやなとか、ファブルにしかできないような一生役に立たない豆知識も付いたし、大満足の第六巻であった。