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【漫画】ザ・ファブル(8) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

プロやからな――

情報

作者:南勝久

試し読み:ザ・ファブル (8)

ざっくりあらすじ

ファブルに弟子入りしたいクロは、一緒に山ごもり。一方、取り残された妹(ということこになっている)ヨウコは、暇つぶしに男を酔わせるためバーへと足を運んだ。

感想などなど

神回である。最初にそう言っておこう。

この第八巻は『クロとファブルによる山ごもり』と『ヨウコによる男を酔わせる遊び』の二つで構成されている。前者はファブルがかつて山に訓練と称して捨てられて、毒などを喰ったり野生動物と戦いながらも生き延びたサバイバル術が、これでもかと遺憾なく発揮される内容となっている。本格的なサバイバル――キャンプなどではなく、本当に野生を生き延びていくような――動画などが好きな人は、がっつり嵌まるような内容である。

ヘビを喰らい、カエルを喰らい、イナゴを喰らうことなどは序の口。野生の熊と遭遇し、普通に戦っているファブル兄の凄まじさ――ここまでしないと伝説の殺し屋にはなれないのか……と多くのことを教えてくれる。

そんな緊張の中、熊に出くわした際にやってはいけないと言われていた死んだふりをするクロ、マムシを喰ったことで勃起が収まらないクロといった一般人らしさが読者の笑いを誘う。

このシュールな笑いは読んで貰わないと伝わらないだろう。是非とも読んで欲しい。

 

『洋子による男を酔わせる遊び』も、山でのファブル達の物語の合間に挟まるような形で描かれる。暇そうに――ただ酒を飲んでいるだけの彼女が、その暇を潰すために、とある男に目を付けた。

その男が初登場したのは第四巻。ちょっとした暇を潰すための遊び相手として、連絡先を入手しておいたユウキ君。彼に連絡し、いつものバーに呼び出した。こうして何とかして彼女をホテルに連れて行きたい男と、酒に酔わせて潰したい女の対決が始まっていく。

この対決が八巻を神回としている要因である。エピソードのタイトルもド直球「おもちゃの男」「テキーラの男」であり、双方の張り巡らせた罠が――ヨウコが全て返り討ちにしているが――学べる教材となっている。

一時間も前に来て、マスターに作戦を説明するユウキ君。「いつもの」と酒を頼んだら、レディキラー系のカクテル(甘くてキツいカクテル)を出し、自分には同じカクテルのアルコールを度数を弱めたものをお願いする。

その依頼を受けたバーのマスター。彼はフェアな勝負を望む男であった。

ユウキ君とヨウコの二人に、レディキラー系のキツいカクテルを出した。ただし二人とも同じアルコール度数のものを出したのだ。こうして同じ土俵での対決となり、どちらが先に酔い潰れるかの戦いとなった。

おかしい……山で熊と戦っていたはずなのに……かなり緊張するシーンのはずなのに……ヨウコ対ユウキ君の対決にシーンが移ると爆笑してしまう。どうしても彼女を持ち帰りたい男の執念と、それを知った上で自分の酒の強さを武器にねじ伏せる女の強さ、その勝負の場を生み出した凄腕マスターの三人によって、ラストシーンが完成される。

良く出来たコントのような漫画であった。是非とも読んで欲しい。

......映画化しねぇかな。

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