※ネタバレをしないように書いています。
鏡に答えはない
情報
作者:田中一行
試し読み:ジャンケットバンク 13
ざっくりあらすじ
眞鍋瑚太郞が有利のままゲーム「シヴァリング・ファイア」は進行し、追い込まれていく真経津。ついに決着。
感想などなど
ゲーム「シヴァリング・ファイア」は全4ラウンドのジャンケンを繰り返して部屋の温度を変えて相手を○すゲームである。詳しいことは12巻の感想で書いているので、そちらを参照して欲しい。
そもそも温度変化で相手を○すというのは、かなり難しい。
例えば相手の室温を5度下げてやりたいとしたら、相手が「ICEのパー」を出すタイミングで「HOTのグー」もしくは「ICEのグー」を出すということをしなければならない。しかも相手がICEで勝った後で、HOTで勝った場合は相殺されてしまう。
相手の室温を自分の思い通りに変えさせるという芸当は、本来であればかなりの無理難題なのだ。その上、命が奪われるほどの温度変化を起こそうとすると、どうしても、「6回中4回あいこ」を繰り返して温度変化をストックさせるというルールを活用することが求められる
しかし、そんな勝利するために達成したい「6回中4回あいこ」は、意図して起こすことができない。互いの協力、もしくは相当な実力差がない限り……第13巻では、そんな「6回中4回あいこ」という無理が何回も引き起こされる。
眞鍋と真経津の間にある相当な実力差によって、意図的に引き起こされてしまった。
真経津は相手が考えていることを逆手にとって勝つ男だ。どんなに賢い人達であっても、自分が見たいようにしか世界を見ない。だからこそ真経津という男に対する想定も、結局、自分が想定する最悪の範疇を超えない。
眞鍋にとって、見えている世界はどういうものか。
これまでのギャンブラー同様、眞鍋もかなりお喋りだ。しかしそれは、教育者という立場から出てくる「教え」という形で発言される。真経津という男の強さを認めつつ、弱さを分析し、「どのような策を弄してくるか」を的確に読み、問題点を列挙。次に生かせるように教育してくれる。
彼は立派な大人を探していたらここまで来てしまったと言っていた。それに対して、下記のように真経津は答えている。
探し方か 探すモノを間違えている
眞鍋の凄いところは、そんな真経津の言葉を理解した上で「間違いに気付かせること」が教師の本懐であるとし、実力を持って正しい答えを示そうとしているところだ。
僕の傲慢さが君の人生を豊かにしてくれると信じているから
彼の強さはその傲慢さにある。
幸福や勝利に必要なのは迎合や妥協ではなく強い意志とそれを実現する能力だった
彼は自分が語る通りにしか世界を見ていなかった。
僕には敵への愛がある
見るべきものは本当にそこだけでいいのだろうか?
結末まで見た後に第十二巻から改めて読み返すと、自分たち読者の視野が如何に狭かったかが気付かされる。見るべきはそれぞれの真経津と眞鍋の温度変化に関係があるジャンケンの結果だけではなかった。
これまでのゲームだってそうだったはずである。
これからこの第十三巻を読むという人は、自分だったらどうやって勝とうとするのかを考えて読んでほしい。この二人でなければ成立しなかったゲームの結末を、是非とも見届けてほしい。
最高のゲームだった。