※ネタバレをしないように書いています。
石造りの海
情報
作者:荒木飛呂彦
ざっくりあらすじ
ジョンガリ・Aによる狙撃と、敵はもう一人いた。その何者かに嵌められて、DISCOVERのように何かを奪われてしまった空条承太朗は、スタンドが使えなくなり、いつしか心臓も止まってしまった。徐倫はそんな父を救うため、脱獄の一歩手前まで迫った状況で中に戻ることを決意する。
感想などなど
ドロドロに溶けた空間……敵を倒したと思ったら元いた面会室に戻された。それが繰り返され、夢と現実の境界が曖昧になって、混乱してしまったのは読者だけではない。空条承太郎も混乱し、敵の正体に気付けなかった。
夢の中だけかと思われたジョンガリ・Aは本当にいて、狙撃銃ではなくハンドガンを片手にやって来た。そして虚構を見せていた敵もいた。
敵は計二人いたのだ。
それに気付いた時にはもう敵の策に嵌まっていて、除倫を庇って銃弾を受けた承太郎は重傷。さらにスタンド「ホワイトスネイク」の能力により、身体からDISCを抜き取られてしまった。
「ホワイトスネイク」……能力は「相手の心を溶かしてDISCとして取り出してしまう」というもの。そのDISCは『スタンド』と『心』の二枚にして利用することができる。つまりその敵は、最強のスタンド「スタープラチナ」を狙っていたのだろうか?
ちなみに「スタープラチナ」は数秒時を止め、超精密な動きと超パワーを持つスタンドである。最強スタンド議論では必ず名が上がるほどである。
そんなスタンドが奪われたとなれば状況は最悪。しかし、承太郎は徐倫を逃がすためにスピードワゴン財団(まだ残ってるんやな……)の協力を得て、潜水艦を近くに呼んでいた。もう脱獄はすぐにでも出来るというところまで来ており、例えスタンドを失ったと言えど父と共に逃げ出すことも出来た。
だがしかし。
『心』を失った――つまり精神を失ってしまった承太郎の心臓は止まり、仮死状態となってしまったのだった……。
そんな父を救うため、奪われた『心』を取り返すために、再び監獄に戻っていく徐倫。本当の戦いはここから始まるのだ。
さて、ひとまずの目的ははっきりした。そこで視点はエルメェスという徐倫と一緒のバスに乗ってきた囚人の視点へと移る。どうやら偶然にもスタンドの矢尻の欠片が入ったペンダントを拾い、それにより傷を負ってしまったことでスタンド能力に目覚めてしまったらしい。
そのスタンドの名は「キッス」。
能力は『手から出されたシールを貼り付けた物体(無生物・生物問わない)を、二つに複製し、剥がすと複製された物が一つに戻るが破壊がある』というもの。靴とかに貼り付ければ瓜二つで実体のある同一の靴が二つでき、剥がせば靴は一つになるが壊れてしまう。指に貼れば指が一本増え、剥がせば指に激痛が走る……そういう力。
スタンド使いは引かれ合うという。エルメェスの元に「ホワイトアルバム」の本体が、徐倫に差し向けた刺客が現れ、否が応でも戦いに巻き込まれていくこととなる。
その刺客の男の名はサンダー・マッククイーン。スタンドは「ハイウェイ・トゥ・ヘル」……能力は「本体が道連れにしたいと思った相手を同じ死に方で自殺に引きずり込む」というもの。
シンプルであるが故に厄介。サンダーからしてみれば死のうとすることが攻撃で、死ねば勝ちである。エルメェスは死のうとする敵を死なせないように助けるという意味の分からない構図が完成する。
そんなバトルの途中で、徐倫を助けようとしてくれた野球帽の少年・エンポリオのことも描かれていく。彼は刑務所で産まれ、これまで刑務所で隠れて生きていたようだ。隠れて生きていけたのは、物体の幽霊を操ることができるというスタンド能力があったからのようだ。
そんな彼はエルメェスにも語りかけてくる。犯人である「ホワイトスネイク」に辿り付くために協力して欲しい、と。徐倫と同じく強靱な精神を持つエルメェスの戦いもまた始まっていくことになるのであった。
魅力的な仲間が増えていく感じ、ようやくジョジョが始まったなという感じがしてきた第三巻であった。