工大生のメモ帳

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ダブルブリッドⅦ 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

死の恐怖を忘れるなかれ

情報

作者:中村恵里加

イラスト:藤倉和音

ざっくりあらすじ

”怪” と人、二つの血を持つダブルブリッドである片倉優樹は、肉体の傷を癒やすためにゆっくりと家で休んでいた。そんな中、八牧はその犯人を殺すべく動き出し、犯人である山崎太一朗は自身を蝕もうとする鬼斬りと戦っていた。

感想などなど

無人島での死闘をくぐり抜けて何とか戻って来た第六課の面々。虎司はアメリカ軍の銃により両足が千切れ、八牧はアメリカ軍人を何人か喰って腹におさめました。鵺のネジは仇である赤川への復讐を辞めるも、鬼斬りとなった太一朗に惨殺。太一朗が鬼斬りと化すことも計画通りだったらしい主は、彼に戦いを挑むも敗北。

この巻を通して登場人物達が傷ついただけで終わりました。しいていうなら優樹の右目が削り取られたことが数少ない救いといえるかもしれません。今後、主に優樹の人格が則られることもないでしょう。

今回はそんな傷を癒やす回……になれば良かったのですが、さらに多くの血が流れ、命が失われていきます。救いはない残酷な世界、鬱屈とした雰囲気が漂うシーンが続いていきます。

 

今回、焦点が当てられるキャラクターは巨大な身体を持つ甲型怪である八牧でした。仲間を守るために兇人(=鬼斬りとなった太一朗のことを指す)を殺す覚悟を決めた八牧の独白が冒頭で描かれます。

孤島での一連の騒動で怪を殺すことしか考えられなくなる鬼斬りへと身をやつした太一朗が、「もしも虎司と顔を合わせたら?」「優樹と街中でぱったりと出会ったら?」ことを想像して下さい。最低で最悪なエンディングが思い浮かんだことでしょう。

戦闘力的に第六課の中、いや日本の中でもかなり上位に位置する八牧。彼が兇人に勝てないということは、もう勝てる怪はいない……自分にしかできないことだと八牧は自身に言い聞かせ、淡々と殺すための準備を行う姿が描かれます。

しかし、問題は『鬼斬りをどのように殺すか』ということでしょう。腕を切り落とした程度であれば瞬時に回復し、食い殺そうにも鬼斬りの枝が怪の体内に入って成長し八牧を殺すでしょう。弱点は炎ですが、相手は黙って燃やされるほど馬鹿ではありません。

兇人に殺されずに、肉体を燃やし尽くす……そのために八牧は、

夏純に競艇場に連れてってもらう。

拾った子供を優樹に預ける。

浦木と何やら契約を交わす。

……等々、一見すると戦闘に関わりのないような行動ですが、上記書き連ねた行動は『鬼斬りをどのように殺すか』を考えた結果であり、戦闘において全ての行動の意味が分かるようになっています。前半で意味が分からない、と思った方も最後まで読むことをおすすめします。

 

そのように殺される準備がなされていることは露知らず、山崎太一朗は精神が鬼斬りに蝕まれないように必死に耐えている……ようで全く耐えられていない様子が描かれていきます。

鬼斬りによる意識の支配はそうとうに強いようで、近くに怪がいると意識が飛び勝手に戦闘を始めてしまいます。意識を取り戻した太一朗の手は血で汚れ、自分が怪と戦闘を行っていたことを知り、自分の精神が鬼斬りに負けたことを歯をかみしめる訳です。

しかも太一朗の記憶の中から、言い合いをしてきた大田や、焼肉をおごる約束をしていた虎司、面識はない夏純に関することが消えていきます。さらに一度は恋心を抱いたはずの優樹のことですら、漠然としたシルエットですしか思い出せなくなっていくようでした。

もう後半になると、描かれているこの男は太一朗と呼べるのか? と首を傾げてしまうような存在へと成り果てていきます。読者ですら、もう殺すしかないだろ……と思ってしまう程に。

一切の救いがないダブルブリッド第七巻、癒やし? ないですね。

強いて言うならば八牧が拾ってきて優樹に預けた子供でしょうか。親に虐待を受けたらしい顔面は痣がいくつもでき、あばら骨が浮かび、夏純のタバコの火を酷く恐れる女の子でした。そんな彼女が心を開いた相手は、人食いの怪であり、彼は仲間を守るために命を賭けようとしていました。

……そんな少女がどのようにストーリーに関わってくるのか? 予測しながら読み進めると面白いかもしれません。皆に幸あれ。

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