※ネタバレをしないように書いています。
ゴースト・スタンド・バトル
情報
作者:近藤憲一
試し読み:ダークギャザリング 3
ざっくりあらすじ
新しく神代愛衣という女子高生の担当もすることとなった螢多朗は、彼女が何かしらの霊に取り憑かれていることに気付き、寶月夜宵に相談する。すると彼女には二人の霊が取り憑いていたらしく……。
感想などなど
オカルトマニア兼束縛系女子こと詠子と、霊に愛される男・螢多朗の清きお付き合いが始まることとなった第二巻。GPSは標準装備、監視カメラは乙女の嗜みとでも言わんばかりの詠子の束縛気質を全く気にせず、今日も今日とて霊の捕縛は行われていく。
まず手始めに攻略されるのは、都内最恐と呼び声高い『Sトンネル』。白いワンピース姿に長髪、血まみれの顔をした女性が現れ、トンネルを通過しようとする車の前に現れたり横切ったりするらしい。
この霊をいつも通りに捕まえる訳だが……例え霊相手だとしても、最後に頼れるのはフィジカルということを学ぶ良い機会となった。霊の髪の毛を引きちぎって、首に縄をかけて引っ張るという芸当は、霊だけでなく生身の人間にもおそらく有効である。
そうして仲間に加えた霊が、活躍する機会はすぐにやってくることとなる。
人付き合いの鍛錬のためという目的で始めた家庭教師として、新しく担当する生徒が増えることとなった。その生徒は見るからにギャルの女子高生・神代愛衣である。顔面からずっこけ、髪の毛にガムのゴミをひっつけた彼女とのファーストコンタクトは、不幸体質という彼女の特質を説明するには十分だろう。
そんな彼女を教え導く教師としての仕事は中々に波乱に満ちそうな立ち上がりを見せる。
まず一つ、彼女は想像を絶する阿呆である。勘で答えても当たりそうな問題を全部外す辺り、運の悪さはここにも表れているのかもしれない。
そして二つ、想像を上回る不幸体質であるということ。なにせその不幸のせいで、彼女の兄は死んでいる。一緒に二人で街中を歩いている時、上から振ってきた鉄骨によって兄は潰れて死んだ。これを不幸と言わずして何と言おうか。
ただその不幸には、どうやら裏があるらしい。
彼女には霊が取り憑いているようなのだ。
この霊をどうにかするために行動を開始した螢多朗と夜宵は、厄介な事件に巻き込まれていくこととなる。
今回巻き込まれることになる厄介な事件を一言で説明すると、『神とそれを取り巻く霊達からの逃走劇』とでも言えよう。オチを言ってしまうと、この事件はこの第三巻だけでは解決しない。解決のためには日本全土を巻き込むかもしれないからだ。
そんな事件の中心に居るのが神代愛衣だ。自身の不幸体質により周囲に不幸を振りまいてきた人生で、その闇を振り払えるかもしれないという希望を、螢多朗と夜宵に見たのはほんの一瞬で、そこから真実を知る度に曇っていく彼女の表情が、個人的には好きだったりする。
希望と絶望の浮き沈みが激しい第三巻であった。