※ネタバレをしないように書いています。
※これまで(出版順)のネタバレを含みます。
美しさを求めて
情報
作者:上遠野浩平
イラスト:緒方剛志
ざっくりあらすじ
末真知子はパニックキュートとマロゥボーンに連れ回され、ブギーポップを探すこととなる。
「これ以上醜くなる前に殺す」ブギーポップと「流れていくことで美しさを増す」と考えるパニックキュートが一つの町に集まる時、何かが起こる。
感想などなど
美しい世界とは何だろうか。いや、 ”美しさ” とは何か? と考えるべきだろうか。
ブギーポップは「これ以上醜くならないように殺してくれる」と女子高生の間では噂されている。つまり。美しさとは時間の経過と共に廃れていくものであり、美には限界があると考えられているようだ。
パニックキュートの考え方は、これとは大きく異なっている。
まず彼が追求しているのは『世界の美しさ』だ。しかし、それは平和で平穏な世界という意味ではない。彼にとっての美しい世界とは、人が絶えず動き回り、固定化されない世界のことなのだ。
もっと端的に説明しよう。『巨大な帝国が生み出された瞬間、その世界は美しくなくなる』のだ。
だからパニックキュートは、巨大な帝国に恐怖と混乱をばらまく。安定して動くことを諦めた者を徹底的に排除する。
……パニックキュートの思考が理解して貰えただろうか? 分からなくても問題はない。ピニックキュートの護衛役であるマロゥボーンも、本当の意味での理解は諦めている節があるし、ブログ主も理解できているかは怪しい。
とりあえず、『パニックキュートはブギーポップを倒したい』ということをここでは理解しておこう。そのための協力者として選ばれたのが、博士こと末真知子なのである。
今回の物語の大半は末真和子とパニックキュートの会話で構成されている。永遠と「美とは何か?」「ブギーポップとは何か?」といった疑問に対して問答が繰り返される。
その間、ブギーポップからの襲撃が挟まれ、物語は進行していくこととなる。
ブギーポップは『世界の危機が現れた時、自動的に現れる』。今回も ”世界の危機” がやって来ているということなのだろうか。
しかし、どうにもおかしい。
まずブギーポップは今回、自ら進んで一般人を事件に巻き込んでいる。これまで、そんなことがあっただろうか。次に糸を使った攻撃を行っていない。さらに言うならば、口笛が聞こえてこない。
もしかしたらブギーポップも反抗期なのかもしれない。
今回の物語で注目して貰いたいのは二つ。
一つ目は『末真和子の凄さ』、これまでも十分凄かったが、事件に直接関わり解決に導いたのは今回が初めて。その辺りを踏まえて物語を読んで欲しい。
二つ目は『ブギーポップの能力の高さ』、ブギーポップは統和機構に噂としか認識されていなかった。これまで、かなり多くの世界の敵を葬り去り、世界を救っていながら、世界最大の機関に捕捉されていない(まぁ、オキシジェンが何を考えているか分かりませんが)。その辺りの情報が明るみになっている。
ブギーポップシリーズの中では、かなり短いながら、どんでん返しありで綺麗にまとまった美しい作品でした。