工大生のメモ帳

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朧月夜 ヒカルが地球にいたころ④ 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

ミステリアス現代学園ロマンス

情報

作者:野村美月

イラスト:竹岡美穂

ざっくりあらすじ

突然に葵から「彼氏になってください」と頼まれてしまった是光。それにより帆夏との関係性もギクシャクとしていく最中、さらにヒカルの愛人を名乗る月夜子が現れた。

感想などなど

これまで葵という婚約者がいながら、ヒカルと関係性を結んだ数多くの女性が登場していた。ヒカルの様子から察するに、もっと多くの女性と肉体関係にあったことは想像に難くない。

今回も愛人を名乗る女性が現れるが、何というか大した驚きはない。むしろこれまでの女性達が愛人を名乗らなかったことが少しばかり驚きである。彼に葵という婚約者がいたということは、校内で知らない人間はいないはずだからだ。まぁ、是光は知らなかったようだが。

愛人を名乗った女性の名は月夜子。紅い長髪と、すらりと伸びた脚が美しい上級生である。日本舞踊を嗜み、学園でも日舞研に所属し、言わずもがなかなりの有名人であるようだ。いつもながら是光は彼女のことを認知していないようだが。

そんな彼女はいきなり是光の前に現れ、「わたしがヒカルの大事な花を散らさないように、見張っていてくれる?」とお願いしてくる。妖艶な魅力とでも言うのだろうか、年上特有の引っ張っていく感じとも言うべきだろうか。とにかく是光には断ることなどできようはずがない。

そうして(どういう訳だか)日舞研に是光も入ることになる。同じ部に所属しないと見張ることもできないという理屈らしいが、入部までする必要はないだろうという突っ込みは野暮だろうか。

その部に所属しているのは現在、月夜子だけ。つまりは活動場所の小さなホールのような場所は、是光と月夜子の二人きりの空間へと変貌を遂げることになる。放課後の校舎にて、日舞研ということで和服に着替える先輩……もうね、最高なんですよ。

 

そんな素晴らしい展開に加え、葵から「彼氏になってください」というお願いが舞い込んでくる。これに関しては、見合いを断る口実のために彼氏のふりをして欲しいという意味であったが、どちらにせよデートだったり、仲睦まじく見せるための演技だったりをしなければならないので自然と距離は縮まっていく。

はい、楽しい。これまでのシリアス展開とは違ったラブコメのような幸せな時間が過ぎ去っていく……とはならないのが本シリーズである。

これまでかなりシリアスな事件が取り沙汰されることが多かった。両親が無実の罪を被せられて死去、虐めによる不登校、婚約者の唐突な死去……ふむ、思い返してみるとどれも辛い内容だった。

正直、第四巻は癒やしになると思っていた。だが一番この第四巻がこれまでの中で一番重い、と個人的には思う。虐めと無実の罪と不登校のトリプルパンチのような内容であると言えば、その重さを理解して貰えるだろうか。

そして全体を通してミステリ色が強い。例えば先ほど「わたしがヒカルの大事な花を散らさないように、見張っていてくれる?」という月夜子の台詞をさらりと書いた。しかし、この台詞の意味を理解できる方はいるだろうか。

ヒカルの大事な花というのは何なのか。

月夜子を見張る意味とは何なのか。

これらの言葉の意味を理解できるようになるのは、物語における最終盤であり、そうすることでこれまでの意味深な言葉の数々が、ようやく意味を持つようになる。そして待ち受ける嫌悪感すら抱きかねない真相。

まぁ、文学少女で慣れた方なら大丈夫だろう。美しさの裏には、色々なものを隠しておけるということをブログ主は学んだ。

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