※ネタバレをしないように書いています。
男(モブ)に厳しい世の中です。
情報
作者:三嶋与夢
イラスト:孟達
試し読み:乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 10
ざっくりあらすじ
実家からの圧力でリオンを苦しめているのではないかと悩むアンジェは、いっそリオンとの関係を絶った方が良いのではと考え始める。リオンは自分との婚約がアンジェを苦しめているのではと悩み、彼女との関係を絶った方が良いのかもしれないと考え始める。
感想などなど
アンジェとリオンがイチャイチャしてた。可愛かった。
この第十巻の感想はこの一文で終わらせようかと思った。あらすじも、『二人がいちゃいちゃした』で終わらせても問題ない気がする。一応、第三作目のゲームでのアレコレを解決しようと画策しなければいけないのだが、そんなことよりもリオンとアンジェの関係修復に多くが割かれる内容となっている。
アンジェは公爵令嬢である。第一巻の頃はユリウス殿下の婚約者であり、ユリウスをたぶらかしたマリエに楯突いていて決闘を申し込んでいたことが思い出される。たとえ家に決められた婚約だったとはいえ、本気でユリウスのことを想い、彼のために行動していた彼女の強さを知れば誰だって惚れる。
その強さは、リオンの妻となった今でも健在だ。リオンの望みである『田舎で静かに暮らすこと』を叶えるために、リオンの持つロストアイテムを自分の物にしたいレッドグレイブ家との折衝を陰ながらこなしていたのだ。その健気さたるや……やっぱり惚れる。
しかし、どんなに間を取り持とうとしても、公爵家として持っている力は絶大で、リオンは面倒事に巻き込まれてしまう。戦いたくないという彼の願いは、どうしたって叶えない。その原因が自分にあるのではないか? そう考えたアンジェは、リオンとの関係を絶つべきではないかと思い始める。
そもそも日本社会で生きていたリオンは、アンジェの考える妻としての姿と、自分が思い描く妻の姿の間にギャップを感じていた。彼にとって、アンジェはただ一緒にいてくれるだけで十分。しかしアンジェは横に並び立つ妻としての姿を目指していたのに、自分のせいでリオンが苦しむ(と彼女は思っている)。
自分がリオンの隣に立っている資格などなかった、と。
そういう発想に至るまでの過程には、アンジェがリオンに対して抱く強い尊敬の念が込められている。学園に入る前にダンジョンに踏み入りロストアイテムを入手。その後も各地でダンジョンを攻略する姿は、冒険者として目指すべき英雄であろう。
彼女がリオンの凄さを語るとき、彼を心底愛してやまない者の顔をしている。
愛しているからこそ別れる。これほど辛いことはない。
かくいうリオンも思い悩んでいた。アンジェが自分のことで悩んでいるということを、ルクシオンやリビアからの指摘で理解し、だったらいっそのこと……というアンジェと似たような思考プロセスを辿っていた。
それが許せないのは、リビアである。ルクシオンは……まぁ、なんだかんだでマスターの幸せを望む良い子なので、色々と考えて毒舌を吐いてくれる。「女心が分からない」といった類いのことを、様々な形で言い換えて伝えてくる。
しかし、彼も彼女も関係を絶ちたくないというのが本音だ。
そこでリオンが立てた一案は、アンジェと一緒にダンジョン攻略をするというもの。アンジェが一財産を築けるレベルの宝を見つければ御の字。仲も深まるという完璧な作戦? だったのだが、それを邪魔するかの如く「マリエ」「五馬鹿」といった面々も一緒にダンジョン攻略に乗り出す。
しかも「誰が一番最初に宝を見つけるか」という勝負に発展するのだから、さすがは冒険者大国と呼ばれるだけはある冒険者馬鹿達の集まりであった。ただリオンにはゲームの知識がある。
しかし、リオンの周辺の者達も馬鹿ではない。リオンが持っているルクシオンの力や、リオンについて回ることで漁夫の利を狙ったりと、独自の作戦で宝を狙ってくる。その掛け合いが面白い。
そしてアンジェとの関係性も意外な形で修復していく。
つまりは最後にイチャイチャしてくれる。後から読み返すと、道中のアンジェとリオンの喧嘩のようなものも、全てがイチャイチャに見えてくるのだから不思議だ。喧嘩というように書いたが、あれは全て愛故のイチャイチャ。
途中ヒヤッとするかもしれないが、どうか安心して読み進めて欲しい。全部イチャイチャなのだから。