工大生のメモ帳

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半分の月がのぼる空3 感想

【前:第二巻】【第一巻】【次:第四巻

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

思いを伝える難しさ

情報

作者:橋本紡

イラスト:山本ケイジ

ざっくりあらすじ

「行ってみたいなぁ、裕一の学校」

そんな彼女の願いを叶えるべく、裕一は行動を開始する。

感想などなど

『銀河鉄道の夜』の結末……死亡エンド(『銀河鉄道の夜』は複数回改稿されているの中で、この結末を選んだようです……)を見て、里香は一体何を思ったのか。裕一の心情は穏やかではありません。

しかし、彼女は少なからず生きたいという意思を見せてくれました。そんな彼女を取り囲む多くの大人達。……。

この作品は一体どこへ向かっているのでしょうか。

 

今回、大人達が肩を震わせ、涙を流す姿が何回か描写されます。それに対し ”子供” である裕一は困惑し、目を背けました。

また、大人らしからぬ(ある意味大人らしい)行動を取る大人もいます。それに対し裕一は再び困惑し、流されていきます。

この作品ではたくさんの大人が登場します。裕一にクズだと言われ早くになくなった父親、酒を飲み学生に暴力を振るう医者、口の悪い看護婦……。今回も新たな側面を持った大人が登場します。

どの大人もそれぞれが人間くさい悩みを抱え、裕一の前で涙に震えた背中を見せたり、心の内を見せないような、しかし隠し切れていない素振りをしているのです。裕一よりも遙かに長く生きて、人生経験だって多くを積み重ね、知識量も権力も何もかもが上なのに……

これから死ぬという里香に対して何もできないのです。

この絶望感。文章からひしひしと伝わってきます。

大人でさえもいつ死ぬか分からない里香を救えず、何もできぬまま、日常が淡々と過ぎ去っていく。裕一の同級生だって裕一が何も言わなければ、『一人の少女が心臓の病気で死にそうになっている』なんてことを知ることはなかったでしょう。

そんな学校で、未来に対して漠然として不安を抱えながらも、楽しく学園生活を過ごす同級生達との対比も、里香の状況を際立たせるアクセントとなっていました。

 

田舎に住む者にしか分からないことかも知れませんが、東京などの都会に対する憧れが自分には少なからずあります。建物よりも田んぼや畑に囲まれて過ごした自分にとって、修学旅行で初めて行った東京は色々と驚きでしたね。夜出歩いても人がいるし、街灯もあって、電車も一時間とか待たなくもいいなんて。

都会住みの親戚に言わせてみれば「田舎は夜が静かで良い」(いや、虫多いですよ)とか「無農薬野菜とか食べれるし」(いや、結局薬は何だかんだでまきますよ)とか「人が優しい」(クソ不味いスイカをくれたりしますよ)と色々あるのでしょうが、やっぱり都会に対しての憧れは抱かずにはいられません。大抵の人がそうだと思いますし、そういう思いは子供の頃よりも、大人になってからの方が強くなるように思います。

本作の大人達も似たようなものです。夏目先生も元々都会に憧れ東京の大学に進学し、医者になったという経緯があるようです。

ん? では、何故今はこんな田舎の病院に勤めているのでしょう。

技術が芳しくなかった? ということでもなく、技術に関しては日本トップレベルだとか。ますます彼の行動や過去に関する疑問が沸いてきます。

……前巻の最後の暴力は、酒に酔い、次の日には全く記憶から消えていた模様。もしかすると、そこで語った言葉が全てなのかも知れないですね。

 

ラストはかなり衝撃でした。リアルタイムに追っかけていた人は、次の巻が出るまで死んだような心地で過ごしたのではないでしょうか。完結してから一気読みできる自分の生まれに感謝。

皆さんもこの作品は一気読みすべきたと思います。というか、一気読みせずにはいられない作品です。今回も心にずっしとくる、そんな物語でした。

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