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【漫画】寄宿学校のジュリエット16 感想

【前:第十五巻】【第一巻】【次:な  し】
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※ネタバレをしないように書いています。

禁断の恋

情報

作者:金田陽介

試し読み:寄宿学校のジュリエット (16)

ざっくりあらすじ

犬塚達の宿にペルシアの父ターキッシュがやって来て、ペルシアの自主退学を告げ、娘の言い分も聞かずに無理やり屋敷に連れ帰った。そんなペルシア奪還のため、ダリア学園の生徒達は立ち上がった。

感想などなど

ペルシアの父が宿にやって来て、娘を連れ帰ったところで終わった第十五巻。風呂に突入して下着を届けるとか馬鹿していたと思いきや、状況は目まぐるしく変わっていく。第十六巻ではダリア学園の生徒全員でペルシアのいる屋敷へと突入していく。

ウエスト公国は貴族制度が残る国だ。そんな中、ペルシアの父は伯爵号を持つ貴族で、屋敷も相当に豪華絢爛な城みたいな場所だった。周囲は塀に囲まれ、門には当然ながら門番がいて、中に入ろうにも入れない。

そんな彼らを屋敷に招き入れたのは、ペルシアの母にしてウエスト公国一の女優・ラグドールさんだった……といったところで第十五巻は終わっている。第十六巻からは個性豊かなクラスメイト達が、なんやかんやで屋敷の中で大暴れして次々とボディガードに連行されていく中、露壬雄がペルシアを連れ帰るために奮闘することとなる。

潜入するためにメイドコスした蓮季が可愛いとか、スコットが相変わらず空気読めてないとか、ペルシアも頑張ってんなぁとか、色々と突っ込みポイントを乗り越えて、ペルシアと露壬雄は行動を開始した。

その際、敵として立ち塞がるのが、ペルシアの父・ターキッシュである。

手袋を投げつけて、始まるのは刀を持った真剣勝負の決闘。このターキッシュと露壬雄の勝負の結末に、納得できるかどうかで第十六巻の評価はかなり別れるような気がする。ちなみにブログ主は、『その後のペルシアの反抗が可愛いいし格好いいから良し』派の人間である。

 

世界を変えようと意気込んでいるだけの者は、何もしていないのと同じだ。

ペルシアと普通に恋ができるように世界を変える、そう告白した第一巻。そこから下着バレ事件や、監督生選挙を乗り越え、ダリア学園全体を大きく変えた。かつてターキッシュにはできなかったことだ。

学園の変化が世界に広がっていく……その第一歩が、ターキッシュの心変わりではないだろうか。そして「世界を変えよう」という意思の広がりは、それだけには止まらない。

そもそも世界を変えるためには、何の力もない一般人には難しい。露壬雄の出身はそれなりの名家とはいえ、ペルシアが伯爵家の一人娘とはいえ、まだ学生である。学園全体の空気を変えたという時点で、かなり奇跡的なことだった。

この第十六巻、修学旅行の一日で世界を変えることなんて出来るわけ……いや、できる奴が一人いた。

この国の第一王女、シャル姫である。

第十六巻、修学旅行にて、世界は大きく変わっていった。これから先、彼・彼女達の人生への希望に満ちた幕引きだった。

 

第十六巻を読む前に、これまでの巻を全て読み返した。

第一巻、決闘中の告白。ペルシアの想いを誤解していた彼は、本気で彼女に告白することにした。ここから全ては始まったのだ。

第二巻、蓮季からの告白。この巻で蓮季のことが好きになった読者も多いのではないだろうか。第三巻、体育祭で起きた『おっぱいクソ野郎』事件は遠い昔のことである(どうでもいいが十二幕の表紙、三つ編みペルシアが好き)。第四巻、第五巻のペルシアの誕生日を巡って起きた事件が起きている。「オレ達は何も……悪いことなんてしてねぇんだ……そうだろ?」という露壬雄の台詞が個人的に印象に残っている。

忘れてはいけないのは第九巻、露壬雄の母・千代とペルシアの父・ターキッシュが、学生時代に付き合っていたことが判明。二人の関係性がバレ、学園を追放された経緯が語られる。そのことを後悔しているかと尋ねられた千代は、「それがどんな結末を迎えた恋であっても幸せだった日々は変わらない」と幸せそうな笑みで答える。

『別れは確かに辛かった けどあの時幸せで そして今も幸せ 何を悔いる必要があるのかしら?』

そんな人だからこそ、ターキッシュは好きになったのかもしれない。とても素敵な考え方だった。この考え方は、第十六巻のペルシアに受け継がれていく。

馬鹿なこともしたけれど、喧嘩だってしたけれど、一貫して世界を変えるという目的があった。そんな露壬雄とペルシアが掴むべきハッピーエンドが第十六巻にはあった。

最高の最終巻であった。

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