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【漫画】少女終末旅行② 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

絶望と仲良く

情報

作者:つくみず

試し読み:少女終末旅行 2巻

ざっくりあらすじ

文明が崩壊してしまった世界で、ふたりぼっちになってしまったチトとユーリ。愛車ケッテンクラートに乗って、廃墟を当てなく彷徨う彼女達の日常。

感想などなど

「写真」

チトとユーリが貰ったカメラでいちゃいちゃする話である。可愛い。絶望的な世界だけれど、こういう楽しみがあって二人の姿が写真という形で残るのは救いと言ってもいいのではないだろうか。

 

「寺院」

二人がたどり着いた夜に一番明るくなる建物の中は、あの世である極楽浄土の再現して作られた寺院であった。これまでの旅路で幾度となく見かけた石像が、実は神のことを示していたりと、この周辺の人々が進行していた宗教なのだろう。

暗い道を進んだ先に明るく装飾された広大な場所。見上げるほど大きな石像と、眩しい光に照らされて、二人の瞳に神の像が写り込んだ。

真っ暗闇の世界を明るく照らしてくれる存在を神とするならば、チトとユーリは互いのことを意識して、「もしかしてチーちゃんが神なのでは?」と首をかしげるユーリが可愛らしい。

 つくみずの描いた世界観を象徴する話だと個人的に思う。

 

「住居」

 二人に定住する家はない。強いて言うならケッテンクラートだろうが、家と呼ぶには少し頼りない。そんな二人が住んでみたい住居というものを夢想していく話となっている。本棚というチトらしいチョイスから、食料棚というユーリらしいチョイスなど、二人の個性が詰まりまくった一つの部屋が完成する。

……まぁ、全部妄想な訳だが。

「この旅路が私たちの家ってわけだね」

というセリフが全てをかっさらっていく。

 

「昼寝」

 夢というのは良く分からないものだ。これはチトが見たシュールな夢をただ描いただけの話。

 

「雨音」

 突然の雨に降られたチトとユーリが、雨宿りするだけの話である。ただそれだけの話の中に、絶望の中の癒しと、漫画という二次元の中でありながら音楽が聞こえてきそうな軽快さを兼ね備えている。

雨宿りした場所で、雨漏りする箇所から落ちてくる水滴。それに合わせて置いたバケツやヘルメットが、水滴と当たることで奏でられる音を聞き、楽しいと感じる二人。音楽というものを知識でしか知らないチトは、これがもしかして音楽なのではと思い立つ。

音楽というのはこうやって誕生したのかもしれない。

「いつもの世界ってこんなに……静かなんだな」という締めのセリフもまた素晴らしい空気感を形作っている。

 

「故障」「技術」「離陸」

ケッテンクラートが故障して絶望していたチトとユーリの前に、飛行機を作って飛ばすために奮闘するイシイという女性が現れた。彼女にケッテンクラートを修理してもらう代わりに、飛行機を作成する手伝いをすることとなった。

この絶望的な世界の中で、飛行機の技術は失われたかに思えた。が、彼女のいる場所にはこれまで人類が歩んできた飛行機技術の資料が数多く残されており、それを紐解いたイシイは何とか人を乗せて飛ぶことができる飛行機を完成させようとしていたようなのだ。

そしてそれを使ってイシイは隣街まで飛んでいこうとしているのだという。失敗すれば死ぬことは間違いない挑戦を心配するチトに対し、「この都市と共に死んでいくだけだ」と覚悟を口にする。

絶望的な世界の中であっても、生きるためにすることを見つけ、これまでたった一人で活動した彼女。その最後の瞬間が近づきつつある時に、それを見届けてくれる二人に出会えたことは、これ以上ない幸せなのではないだろうか。

絶望と仲良く、彼女はできたのではないだろうか。

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