工大生のメモ帳

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悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました4 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻

※ネタバレをしないように書いています。

ラスボス飼ってみた

情報

作者:永瀬さらさ

イラスト:紫真依

試し読み:悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました 4

ざっくりあらすじ

外交のために、永世中立をうたう神聖ハウゼル女王国へと向かうための船に乗り込んだアイリーン。しかし、その航海の途中で拉致され、聖王・が治める『聖と魔と乙女のレガリア3』の舞台・アシュメイル王国に連れて行かれてしまう。その国内では聖なる力の影響で、魔力が通じないらしく――。

感想などなど

『聖と魔と乙女のレガリア』の主人公・リリアとの因縁に終止符を打ち、全てを終わらせた第三巻。魔王・クロードの記憶が失われた時はどうしようかと思ったが、それすらも利用して、最後の最後はハッピーエンドを迎えることができた。

リリアはセドリックと共に罪を背負うこととなり、黒幕だった母親は、父親と共に追放され、このままいけばクロードが皇帝となる道が確約された。魔王が人類が治める国の王となると書くと、他国からしてみれば不穏で安心できないが、その裏にある物語の全てを知っている読者からしてみれば、これはハッピーエンド以外の何物でもない。

初夜は失敗に終わったが、二人らしいといえば二人らしい。跡継ぎ問題で頭を悩ませることは、かなーーーーり先のことになりそうだ。

さて、国のトップになったからには、国の外に目を向ける必要が出てきた。

魔王が人の上に立ったという事実を客観的に見た時、諸外国が「ヤベー」と感想を抱いてしまうのは仕方のないことである。戦争になったとして、魔物を使役できる魔王が圧倒的に有利であることは明らかであるからだ。例えば、この世界には竜という存在がおり、そいつに指示を出されたら国は滅びる。

改めて思うが、クロードという魔王はヤバいのだ。

そんな魔王が実権を握った直後、永世中立をうたう神聖ハウゼル女王国から国への招待状がやって来た。女王国という名前が示す通り女王が治めている。それ以外の大きな特徴としては、永世中立国であり絶対に戦争をしないと宣言しているということ、そして、男子禁制ということが上げられる。

永世中立国をうたっているため、もしもこの国に宣戦布告して攻めるようなことがあれば、諸外国に責め立てられ、世界から孤立することは確定的である。また、男子禁制であるため、クロードのような男は立ち入ることが許されない。

要は最強の魔王であるクロードではなく、その妻アイリーンがこっちに来い。どのような経緯で魔王が国王になったのか、戦争をする気はあるのか。安全は保証されているのか……などなど諸外国が気になっているだろう問題を深掘りして、最終的に永世中立国であるハウゼル女王国が判断してあげましょう、という訳だ。

実際にクロードは戦争する気はさらさらないし、これから外交を進めていくためにアイリーンが向かうこととなった。心配で仕方がないクロードだが、アイリーンは自信満々といった様子で船に乗り込んだ。

その船が神聖ハウゼル女王国に辿り着かないなど、誰に想像できようか。

 

結論から言うと、アイリーン達(リリア、セレナ、レイチェルも同行している)は、アシュメイル王国に拉致された。そしてアイリーンは、国王であるバアルに妃にされてしまう。

嫌な未来予想図が脳裏をよぎった方は、クロード様のことをよく理解できている。分からないという方は、初夜でお預けを食らったクロード様の心境を想像して欲しい。クロードの感情に応じて変わる天候がどうなってしまうのか想像して欲しい。

アイリーンの胸中は穏やかではない。リリアは楽しそうに笑っているのが、これまた怖い。

その笑顔には理由がある。彼女達が拉致されたアシュメイル王国は、『聖と魔と乙女のレガリア3』の舞台なのだ。

ストーリーとしては下記の通り。

『神剣を授かった神の娘が魔竜を倒し、神剣から湧き出る水で砂漠の中に国が出来た』という神話が残るアシュメイル王国にて、魔竜が解き放たれ人に取り憑き、国を滅ぼそうと動き出す。それを止めるべく、ヒロイン・サーラが神剣を復活させて、魔竜を倒す。そしてヒーローと結ばれてハッピーエンドだ。

なんと分かりやすいストーリー……と言いたいところだが、実際はもっと複雑怪奇な設定にストーリーとなっている。この第四巻のストーリーもそんな原作を上回るややこしさになっており、時間を空けて読んでしまったブログ主は、黒幕らしき人間が現れた際「誰だこいつ」となってしまい、読み返すこととなってしまった。

注意されたし。

 

この第四巻の面白さは、アイリーンの男垂らしが遺憾なく発揮されるところにある。ゲームにおける最悪を避けるため、聖王・バアルを攻略しようとするアイリーン。「実際はその必要なないのでは?」となった後にも、無意識に攻略していく様は恐ろしい。

そんな彼女の危機を察したクロードの行動は、冷静であるべき皇帝らしからぬ無鉄砲さと動機に満ちている。彼もまたアイリーンという一人の男垂らしに狂わされた、悲しき男というべきかもしれない。

そんな被害者男性が増えることになる第四巻。読み応えのある第四巻であった。

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