工大生のメモ帳

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悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました5 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻

※ネタバレをしないように書いています。

ラスボス飼ってみた

情報

作者:永瀬さらさ

イラスト:紫真依

試し読み:悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました 5

ざっくりあらすじ

魔の神を名乗るクロードそっくりの美形・ルシェルが、魔界からやって来た。彼の目的は、息子である魔王・クロードを魔界へ連れ帰ることなのだという。アイリーンは必死に抵抗する中、ハウゼル女王国の女王選抜試験の内容が『魔王と愛を育むこと』だと発表され、女王候補が魔王の城へとやって来ることに――。

感想などなど

魔王・クロードにも聖王・バアルなる対等な悪友ができ、随分と楽しい日々を過ごした第四巻。しかしクロードの周辺に漂う不穏な影は変わらずちらつき続け、この第五巻では現在よりも700年前を舞台とした、『聖と魔と乙女のレガリア4 ~聖なる女王と運命の乙女~』のフラグが押し寄せてくる内容となっている。

その第一フラグとして、『聖と魔と乙女のレガリア4』におけるヒーロー兼ラスボスであり、魔王クロードの父・ルシェルが、魔王城に訪れた。彼曰く、魔王クロードは魔界にいるべきであるらしい。

その理由は魔界にいるとされる魔王の本体が、自身の妻であった女性と同じ魂を持つ女性を、運命の相手として好きになり幸せになるようにと、クロードに迫って来ており、それを拒んでアイリーンと愛を育もうとすることに対して怒り、クロードを魔物に変えてしまおうとしているらしい。

クロードの魔力の不調は、魔王の怒りを買っているからだろうと推測される。魔王の持つ膨大な魔力は、魔界の本体から供給されているという仕組みであるが故、そういったことが起きてしまうようだ。なるほど、分かりやすい。

魔物になってしまえば、人々のいるこの世界で正気を保っていることはできない。魔王・クロードは魔界にいるべきというのは、クロードのこと、世界のことを思えば正しいことかもしれない。

しかしアイリーンは諦めない。何故なら彼女は聖剣を持っているから。

かつての『聖と魔と乙女のレガリア4』でも聖剣の力やら、愛やらの力をどうにかこうにかして解決した王道ストーリー。それを辿れば良いのではというアイリーンの計画は、ルシェルによって一蹴される。

本来、アイリーンは聖剣の持ち主ではない。そのため彼女の持っている聖剣は正しい姿に非ず。昔の言葉でいうなれば、魔剣と呼ぶものらしい。その魔剣ではクロードを救うには力不足。

アイリーンの当面の目標は決まった。正しい聖剣としての姿を取り戻そう……そんな矢先に事件は矢継ぎ早に起こる。

 

永世中立国・ハウゼル女王国の女王は、選抜試験を乗り越えた者に与えられる実力主義の国家であり、その選抜試験の内容は各国の注目を集める。今回の試験の内容は、なんと『魔王と愛を育むこと』というものであった。

愛を育む……要は愛妾となって子を産めという内容だ。女王になるために他国の王の愛妾になるという意味不明な試験だが、女王候補者達は本気でクロードの貞操を狙ってくる。寝込みを襲う、風呂場に強襲、アイリーンの振りをして忍び寄る……その有様はあまりに酷い。クロードがこれほどまでに弱り切ったことがあっただろうか……いや、意外にあったか。

実はこの展開は『聖と魔と乙女のレガリア4』と同じ。つまり700年前と同じ光景が繰り返されている。かつて想いを果たすことができなかった魔王の本体が、クロードに愛を育ませようと迫る運命の相手にして、ゲームにおけるヒロインもまた、女王候補生の中に紛れ込んでいる。

魔王の本体が仕組んだ運命の相手と結ばれるしかないのだろうか。アイリーンは本物の聖剣の力を手に入れることができるのか。様々な情報が交錯する中、次々と起こる想定外な事件の数々。

例えば。

聖王バアルが治めるアシュメイル国にいる神の娘・サーラが攫われた。いつも余裕な表情だったリリアですら驚きを隠せない事件である。そこからさらにアイリーンも行方をくらませ、クロードは女王候補生の一人と結婚式を挙げ……一つの事件を皮切りに至るところで状況は目まぐるしく変わり、それぞれの思惑が交錯していく。

それら全てが繋がって、最後に描かれるエンディングが美しい第五巻。読んでいて楽しい、推しが増えていくストーリーであった。

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