工大生のメモ帳

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神様のメモ帳7 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

帰るホームはどこにある?

情報

作者:杉井光

イラスト:岸田メル

ざっくりあらすじ

探偵事務所近くの公園で改装工事が始まろうとしていた。その公園に住んでいるホームレス達が慌ただしくしている最中、アイドルからの依頼が舞い込んでくる。どうやらホームレス達の中に父親がいるらしい。

感想などなど

今回の事件はかなり奇怪だと言える。読み終わった後、事件を整理してみると、あまりに偶然が重なりすぎているのだ。事件の始まりから終わりまで、アレがなければ、コレがなければ……と仮定を想像せずにはいられない。

今回の物語を整理するためには、事件を三つに分割しなければいけない。内訳は『アイドルの父親がホームレス事件』と『ホームレス襲撃事件』と『父親殺害事件』の三つ。

 

まず一つ目は『アイドルの父親がホームレス事件』について。テレビ画面に映っている煌びやかな偶像であるアイドルの父親が、今は家もなく公園で段ボール積み重ねた場所で住んでいる……スキャンダル大好き、アイドルだろうが何だろうが踏み入れて欲しくない領域に土足で入り込んでくるマスコミが好きそうなネタである。

アイドル・夏月ユイは公園でホームレスになっている父親らしき男を ”偶然” にも見かけてしまった。その男が父親であるかどうかを確かめたい、話したいことがある……ということでニート探偵に調査を依頼した。しかし、アリスは乗り気ではないようで。

まぁ、夏月ユイはめっちゃ可愛いし、妙に距離感が近いし、可愛いし、鳴海を見るアリスの視線がちょっとばかし強い気がするけど気にしてはいけない。自分の使っていた枕を押しつけなくなったし、服の洗濯も任せなくなったアリスの成長(?)が窺い知れますね。

アリスよりはホームレスと会話したりできる鳴海の方が向いているということで(まぁ、事実ですし)、一人で夏月ユイの父親に関して情報を集めることとなった鳴海。ここで考えるべきは『父親は何故ホームレスになったのか』『何故夏月ユイの元に戻ろうとしないのか』という二点だろう。

夏月ユイ曰く、父親は借金で首が回らなくなり家を出て行ったようだ。しかし、それはあくまでユイが幼いころの記憶。父親が理由を語ってくれた訳ではない。

そしてアイドルの夏月ユイはと言うと、今かなり売れているようだ。駅に行けば彼女のポスターが何枚も貼ってある。テレビでは彼女が出ない日はないとまで言われ、店内BGMとして頻繁に彼女の声を聞くことができる。ホームレスと言えど、夏月ユイが自分の娘であると気付かないとは考えにくい。

 

二つ目は『ホームレス襲撃事件』。これは現実でも実際に起こっているため、想像しやすいのではないだろうか(横浜浮浪者襲撃殺人事件 - Wikipediaなど)。事件概要は名前の通り、公園で生活するホームレスが、あらゆる手を使って攻められるというもの。エアーガンをぶち込まれ、花火を投げ入れられ、家は壊され……ホームがないホームレスにとっては致命傷である。

……ホームレスって保険証とかあるんですかね。

そこに重なる形で、公園の工事開始が告げられる。ホームレス達はどこか諦めがあるように思いますが、ホームレス達と妙に仲が良いニート達――特に中佐は気が気でないようだ。

しかもホームレス襲撃に使われていたのが、改造されたエアーガンだと分かると、「軍人として黙っていられない」とさらに気合いを入れる中佐。改造されたエアーガン……サバゲーの界隈はそれほど広くない。部品や弾の売買のルートも、それほど広くないらしい。犯人は比較的はやく見つかることだろう……と思う時期がありました。

 

三つ目は『父親殺害事件』。ホームレスが夏月ユイの父親であると確定した矢先のことだ。その父親が公園で殺害されたのである。

その殺され方は『改造エアーガンで撃たれ』、『首を切断された』という酷く残虐な殺され方である。これまでたくさんの人の死を見届けてきたが、首を切り落とされた死体というのは中々に衝撃的である。

さて、クビキリ死体というものは数多くのミステリー作品で描かれてきました。そのどれも『何故首を切り落とす必要があるのか?』という問題に焦点が当てられます。その理由として、ぱっと思い浮かぶのは『死体を偽装する』『身元を分からなくする』辺りでしょうか。

本作において『首を切り落とした理由』とは?

 

今回の物語では、複雑に入り乱れた事件それぞれを個別に理解しなければいけません。誰がどれにどのように関係しているのかを整理しつつ読み進めることをお勧めしたい。

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