工大生のメモ帳

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神様のメモ帳8 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

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情報

作者:杉井光

イラスト:岸田メル

ざっくりあらすじ

年始のある日、四代目は雀荘荒らしに悩まされていた。捜査にかり出された鳴海は、奇妙な男に出会う。なんとその男は、四代目の父親であるらしく……。

感想などなど

今回の事件もいつも通りややこしい。いや、正確に言うなれば事件が発覚する順番がややこしいのだ。メインとなる事件によって起こる副産物的な事件から発覚し、まさかと思うような本筋が明らかになっていくような流れなのだ。

だから前半部分を読んだ時点では、正直よく分からない。「……アレ? これって短編だったっけ?」と首を傾げてしまう。あらすじでも示した物語が本作における前半であり、四代目と父親の因縁が描かれていくのだが、その決着(?)は思ったよりも早く付くこととなる。

そんな前半部分でも伏線が張り巡らされており、後半に繋がっていく訳だが。とりあえず、そんな四代目に関連する物語の感想を書いていこう。

 

四代目。裁縫が得意な、任侠を気取った少年不良グループ・平坂組の総長である。これまでの男気溢れる行動や理念に心打たれた読者も多いことだろう。今回も彼の男気は変わらず、格好いい姿を見ることができる。

そんな彼が四代目と呼ばれるのは、本来ならば雛村家の跡取りで四代目と呼ばれるはずだったから……という設定を忘れている人は多いのではなかろうか。つまり、戦うこととなる相手は雛村家三代目である。

どうやら跡取り候補の一人である四代目が、本当に跡取りに相応しいかを試すために(本人に家業を継ぐ気はないのに)、わざわざ大阪からやって来たようだ。さすがは父と言うべきか、麻雀の腕は他人を凌駕し、所持する財産も(ポンと三億出してくれる)、本拠地ではない東京に持つコネの量も尋常ではない(東京の銀行に来て、四代目への融資を止めさせることも容易く行う)。単純な暴力が通用しない相手であり、経験も財力も圧倒的。戦う相手としては最悪であろう。

……というか、雛村家って凄かったんですね……お金持ちだとは知ってしましたが。

 

そんな父親との対決は百ページもかからずに終わる。お察しの通り、この事件は物語としての本筋ではない。しかし、全く関わりが無い訳ではないというのが厄介なところだ。

他にも同時に発生する細々とした事件が読者を混乱させる。まず四代目が頭を悩ませる『雀荘荒らし事件』。次は鳴海が通う学校で頻発している『援助交際事件』。一つずつ簡単に説明していこう。

まずは『雀荘荒らし事件』について。ブログ主が麻雀に疎いので語弊があるかもしれませんが、金を賭ける賭け麻雀で、ズルをして勝って大金を巻き上げている人達がいるということだろうか。そのズルの手法が何個か紹介されていたのですが、正直よく分からなかった。

その事件は四代目が裏で経営している雀荘でも起こっているということで、捜査にかり出されたのが鳴海だった。どうやら、本作における登場人物の中で、アリスの次に麻雀が強いらしい。やはり鳴海は地頭が良いのでしょう。

次の事件は『援助交際事件』。援助交際とは、男性が金銭を払って交際関係となり、女性と肉体関係を結ぶ売春の一種です。調べていたら1996年には流行語大賞を取ってるんですね、知りませんでした。

その援助交際を用いて金を稼いでいて、暴力をふるわれた本校の生徒がいるらしい……久しぶりに学校に行ったと思ったら生徒会の人にその生徒の調査を頼まれた鳴海。学校では裏社会の人間として扱われているようです。

その『援助交際事件』が意外に闇が深い。いや、援助交際という時点でもう闇は深いのですが。学生が脅されて援助交際をしていると思いきや、自ら進んでやっているようで。しかも暴力をふるった相手は、同一人物……? 調べれば調べるほど、謎が深まるばかり。社会の闇を煮詰めて水分を飛ばしたみたいな。

 

そんなバラバラに思えた事件が、一つの証拠から、これまでの違和感が一気に繋がっていく流れは圧巻です。そこからは意識せずに一度に最後まで読み進めてしまうことでしょう。これまでの因縁に蹴りをつけるべく戦うニート探偵の面々、勝たなければならないプライドの戦いの幕開けです。

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