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【漫画】葬送のフリーレン(4) 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻

※ネタバレをしないように書いています。

終わりから始まる物語

情報

原作:山田鐘人

作画:アベツカサ

試し読み:葬送のフリーレン (4)

ざっくりあらすじ

賢者ザインを仲間に加え、魂の眠る地を目指すフリーレン一行。ザインが同行することにした目的の一つである戦士ゴリラの情報も集めながらの旅路は、ヒンメルよりも昔の英雄の姿も浮き彫りにしていく。

感想などなど

賢者ザインを意地でも仲間に加えるため、珍しく頑張ることにしたフリーレン。彼女はかつての自分とザインを重ね、「似ている」と感じたようだ。どうやらフリーレンはヒンメル達に強気の勧誘を受けてパーティに加わったようだ。その辺りの経緯は、第三巻の最後辺りで描かれている。

ザインには冒険者として旅立つだけの理由だけはあった。それは10年前に冒険者として村を飛び出していった親友を追いかけるというものだ。しかし10年も経ってしまった……その親友は3年後には帰ってくると言っていたのに戻ってこなかった。

もうどこかで死んでいるだろうという諦めがあった。今更、冒険者として村を出たとしても意味はない。彼はそのように自分が冒険者にならない理由を語った。

いつまでも過去にしがみつき、今更遅いと言い訳を語るザインに対し、「私は今の話をしている」と言ってのけたフリーレンの台詞は、かつてフリーレンがヒンメルに言われたシーンと重なった。

ただザインが冒険者にならない理由はもう一つあった。それは兄の存在だ。

兄はハイターに聖都の司祭にならないかと誘われた。その際、弟であるザインも聖都に連れて行くことが条件であった。それを聞いた兄は、「あの子(=弟)から故郷まで奪うことはできません」と断り、弟と一緒に田舎で生きていく道を選んだ。

そのことを知ったザインは、「兄貴は俺のためにこの村に残ったんだぞ」と故郷で生きていく道を、兄と同じ道を歩んでいくことを決めた。だからこそ冒険者として、今更生きていくことはできない……と。

そんな彼の背中を押したのは、他でもない兄であった。

10年という歳月は長いし、3年経ったら戻ると言っていた者が戻らなかった場合、死んだことを想定するのは当たり前といえる。ただそれはやはり、あくまで想定に過ぎない。このまま死んだという疑惑を抱き続けるのは、積もり積もって大きな後悔になる。

……いや、すでにザインは大きな後悔を抱いているのだろう。もしも3年経って戻らなくなった時、すぐにでも冒険者になって探しに行っていれば、親友の真相も明るみになったかもしれない。6年前でも、5年前でも……10年経った今でも遅くはないはずだ。

 

兄がどのように弟を説得し、フリーレン一行に加えさせたかは読んで貰うとして。

これによりシュタルクとフェルンの子守を担う大人が二人になった……と言いたいところだが、フリーレンは長く生きていながら人の心の機微というものに無頓着で学び途中の子供のようなものであった。

そのためだろう。シュタルクがフェルンとの距離感に悩んだ時、フェルンがシュタルクのことで考えあぐねていた時、相談相手に選ばれたのはフェルンではなくザインだった。「ギャンブル好きの破戒僧」「死んでも天国に行けなさそう」「本当に僧侶なのですか?」と散々な扱いであったが、それなりの人生経験を経た大人として頼られているということなのだろう。

パーティ加入は第四巻の第一話でありながら、すっかりパーティに馴染み戦力として立派な活躍を見せてくれる。

そもそも僧侶とは、魔法使いには扱えない「女神様の魔法」を扱う特殊な職業だ。これの扱い方等々は聖典に記されており、聖典を持っている者にしか使えない。その原理はほとんど分かっておらず、フリーレンにも扱うことはできない。生まれ持った資質がないと扱うのは難しいという訳だ。

そして、この「女神様の魔法」は、魔法では対処できない呪いに対する特攻を持っている。逆に呪いを扱う敵に遭遇した場合、僧侶がいなければ全滅を覚悟するほかない。事実、この第四巻では僧侶ザインがいなければパーティ全滅の危機に陥る。フリーレンが僧侶を求めていたのは、この辺りの理由があるのだろう。

 

そもそもザインの目的は、年上の色っぽいお姉さんと旅をすること……だけではなく、いなくなってしまった親友・冒険者ゴリラを探すためである。すごくインパクトのある名前のおかげで、「ゴリラと名乗る者がいなかったか?」と聞けば面白いくらいに情報が出てくる。

どうやら各地で冒険者として魔物討伐の依頼をこなしたり、一人で頑張っているらしかった。そして同時に、僧侶アゴヒゲという人物の名前も度々登場した。ゴリラはこのアゴヒゲという僧侶と共に冒険し、いずれ世界に名を轟かせる! 歴史に名を刻む! と語っていたらしい。

このアゴヒゲという僧侶、実はザインのことである。

村を飛び出し各地を冒険しながら、アゴヒゲとの冒険を諦めていなかったゴリラ。冒険を始めなければ、そのようなことも知ることはなかっただろう。そしてますます気になるのが、どうしてゴリラが戻ってこなくなったのか?

気になることは多い。まだまだ賑やかになったフリーレン一行の旅は続く。フリーレンの投げキッスがエッチな第四巻であった。

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