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【漫画】葬送のフリーレン(8) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

終わりから始まる物語

情報

原作:山田鐘人

作画:アベツカサ

試し読み:葬送のフリーレン (8)

ざっくりあらすじ

一級魔法使いが随伴でないと立ち入ることすらできない北部高原に、ついに足を踏み入れたフリーレン達。そこには凶悪な魔族が蔓延る危険な地であった。

感想などなど

第七巻の旅路もそこそこに危険であったが、いよいよ北部高原に立ち入ることになる第八巻以降の危険は、これまでとは比にならない。

とはいえ本作における戦闘は、かなり大味な描かれ方をしている。山より大きい巨人や、目が五つある大蛇など危険生物と戦っているようなコマがあるだけで、そいつらとどのような戦闘が行われたかについては想像で補うしかない。

そんな危険地帯にも集落はある。危険と隣り合わせの地にも住もうとする人の強さに感服する。とはいえ少し南に下れば、安全に住むことのできる地がある。「こんな危険な場所で暮らす必要はねぇんじゃねぇか?」というシュタルクの質問はもっともだ。

それに対する「誰が故郷を捨てられましょうか」という解が、個人的にはシンプルで好きである。

そもそも北に向かうだけであれば、海路という手がある。金はかかるが命を金で買うと思えば安い買い物であろう。それでもかつての勇者一行、そして今回のフリーレン一行も陸路を選んだ。それは「他の誰かの故郷も守りたい」というヒンメルの言葉が全てなのだろう。

ヒンメルは勇者になるべくしてなったのだろうと思う。

 

第八巻は、各地での出会いを描いた小話と、一級魔法使いの試験で試験管を務めていたゲナウとメトーデと協力しての魔族討伐で構成されている。小話は小話で、伝説の名酒が封じ込められた結界の解除話や、80年前の借金を返すために300年間坑道でのタダ働きを命じられたフリーレンの話など、印象に残る話は多い。

しかしながら、フェルンと同じ一級魔法使いであるゲナウとメトーデと共に、魔族を討伐する話には、魔族という存在が人間にとってどれほど厄介かが、分かりやすく詰め込まれている。

事の始まりはとある集落が、とある魔族の襲撃を受けて一夜のうちに壊滅したところから始まる。北部高原の集落というだけあって、そこに駐在する騎士はかなりの実力者だった。フリーレン曰く、シュタルクよりも遙かに強かった。

それでもあっさりと負けてしまった。

魔族は人を喰らう。つまりは捕食対象な訳だが、襲撃された集落には人の死体が残されていた。喰らうものだけ殺せば良いのに、まるで試し切りをするかのように積み上げられた死体の数々は、目を覆いたくなるような惨状である。

その死体の処理に、ゲナウ達は困っていた。

いや、死体の処理の方法は決まっている。騎士の随伴の元で、北部高原の南部にある共同墓地に埋葬する。わざわざそこまで運ぶのには理由がある。

死体があると死臭に釣られて魔族が集まり、死体を掘り起こして喰らってしまうのだ。そうなると骨すら残らない。それを避けるために南部まで運ぶのだ。

「火葬すればいいじゃないか」日本は火葬する国なので、その発想に違和感を覚えないかもしれない。しかし、この作品の世界では「苦しんで死んだ人間を火に焼べるなんざ正気の沙汰じゃない」という文化的な思想がある。

そのため死体はそのままに、わざわざ警備を付けて守る。

それを魔族は知っている。それは隙だと考える。

魔族にとって死体を守るというのは人間という種の特性で、理解出来ない発想なのだ。そんな習性を理解し、人を狩るための罠として利用する。あぁ、やはり人と魔族は理解し合えないのだなと分かる。

そんな魔族に人の恐ろしさを教えるため、フリーレンの魔法が火を噴いた。

これからは今回のような魔族との戦闘は増えるかもしれない。そう考えると楽しみな第八巻であった。

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