工大生のメモ帳

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【漫画】葬送のフリーレン(7) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

終わりから始まる物語

情報

原作:山田鐘人

作画:アベツカサ

試し読み:葬送のフリーレン (7)

ざっくりあらすじ

フリーレンは落ち、フェルンのみが試験に合格した。何はともあれ、こうして北へ進むことができるようになったわけだが、その旅はやはり過酷であった。

感想などなど

試験編の三次試験はカットされ、フリーレンの師匠フランメの師匠ゼーリエが適当に会話して決めるというものになった。試験編のテンポが遅すぎと判断されたから最終試験は巻きになった、というメタ読みをしてしまうのはブログ主だけだろうか。

個人的には、たくさんの魔法を見ることができる試験編は好きだ。漠然としていた魔法に関する設定が色々とはっきりしたし、フリーレンの強さというものが、相対的に描かれているのも分かりやすくて良かったと思う。

それぞれの魔法使いが魔法に対して特別な感情を抱いている。魔族を殺すための道具と割り切っている者、殺しをなんとも思わない者、かつての後悔を糧に鍛錬を積む者……そういった様々な考え方・向き合い方を見ることができるのは、魔法使いが大勢集まることになる試験ならではのエピソードなのではないだろうか。

試験に合格した者は、ゼーリエから好きな魔法を一つ授けてもらうことになっている。それぞれどんな魔法を授けてもらったかは描かれていない。ただそんな中でもフェルンは特異だったのではと思う。

なにせ彼女が望んだ魔法は、”服の汚れをきれいさっぱり落とす魔法”……めっちゃ欲しいんだが……神話の時代に存在したとされる伝説級の魔法らしい。こんな便利なのに廃れるなんて、魔法は良く分からないものである。

 

『葬送のフリーレン』という作品の醍醐味は、かつての勇者パーティが辿った軌跡を同じく辿っていくことで、読者に提示されていく過去の物語だろう。それを再び味わえるのが、この第七巻からということになる。

とはいっても、この第七巻ではその醍醐味は薄味と言わざるを得ない。どちらかといえば、フェルンとシュタルクの人間的成長と恋愛模様に焦点が当たっている。フリーレンはしっかりお姉さんをしている様は、ただ歳を重ねているだけじゃないんだなということを教えてくれる。

なにせフェルンとシュタルク、初デートである。

シュタルクははっきりと「フェルンってこんなに可愛かったっけ」と心の中で考えているし、デートに誘われてドギマギするフェルンは無表情な彼女も乙女だったということを知らせてくれる。

それほど危険ではないとされてきたこれまでの道すら、竜やら魔族やらとの戦闘があり、いつ命を落としてもおかしくない危険な旅路。段々と表情が死んでいっているのではないかと心配したくなるような二人であったが、少しは人間らしい感情があったようだ。

 

この第七巻では、かつてヒンメル一行以外にも魔王討伐のために駆り出された勇者の話が語られる。

その勇者は南の勇者、二つ名は人類最強の勇者。勇者という言葉がいっぱい続いて読みにくいが、作中でも南の勇者としか語られていないのだから仕方がない。ヒンメルではなく彼が人類最強と評されているのにはちゃんと理由がある。

第二巻にてフリーレンが討伐した七崩賢の残党、断頭台のアウラ。彼女くらい強い魔族が、ほかにも七人いて、フリーレン一行はそのうちの二人を討伐している。一方、最強とされている南の勇者は一人で三人を討ち取った。

ただ三人を討ち取ったのではない。七人の七崩賢と同時に戦い、三人を討伐したというのだから、その凄さが分かっていただけるのではないだろうか。ヒンメル達が魔王を討伐できたのは、一重に彼の活躍があったからと言っても過言ではない。

そんな彼にまつわるエピソードを回想している内に明かされるのは、フリーレンとヒンメルが出会う前の話。実は南の勇者は、ヒンメルと出会う前のフリーレンと会い、彼女に自分の秘密を打ち明けていたというのだ。

そこで聞いた秘密を、フリーレンは死ぬまで心に秘め続けるのだろう。個人的にお気に入りの一幕となった。この回だけでも満足度の高い第七巻であった。

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