工大生のメモ帳

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薬屋のひとりごと5 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

毒味役少女の事件簿

情報

作者:日向夏

イラスト:しのとうこ

ざっくりあらすじ

一見すると何事もなく平和に終わったかに見えたが、都は不穏な空気が漂い、猫猫はいつも通り事件に巻き込まれていく。

感想などなど

第四巻にて、国全体を巻き込んだ様々な因縁と決着をつけることに成功? した猫猫。それら全てをここで書き切るには、あまりに字数を使いすぎるので、どうか割愛させて欲しい。

とにかく。

壬氏も猫猫も、それぞれの心残りというものを払拭し、元いた場所へと戻っていったという結末だった。猫猫の居場所は宮廷であるように読者は感じてしまうが、本来の居場所であった薬屋へと戻ったのだ。これで思う存分薬を扱えるようになった訳だ。

仮死薬を飲んで生き残った少年・少女達は、それぞれ散り散りになったうえ、記憶を失ってしまったが、どうやら平和で幸せな日々を送ることができているようだ。壬氏は最後の約束を守ったらしい。ちなみに猫猫は趙迂と仲良くしている。

さて、だからといって猫猫に、事件のなにもない平穏な生活が戻ってくるはずもない。いや、むしろもっと大きな政治的問題が絡みつつ、新たな因縁が増えていきそうな予感する感じてしまう物語が始まっていく。

 

本シリーズの特徴として、細々とした事件を解決してくと、実はその全てが繋がっていたという話になっている。第五巻も決して例外ではない。全体を通して様々なワードが不穏な空気を漂わせる要因として機能している。

例えば、かなり初期からイナゴというワードが度々登場する。

イナゴは所詮虫と侮るなかれ。イナゴというのは時に大量発生して、田畑を荒らせるだけ嵐尽くして、人々を飢餓のドン底へと陥れることがある。それはもう一種の大災害だ。

もしもそのイナゴの大量発生が起こる前に、その発生を予期できるならば大勢の人を救える。そして、もしもその発生を食い止めることができる何かがあれば、それは歴史を変えてしまうレベルの大発見となることは、何となく分かって貰えるのではないだろうか。

その予期する手段と、食い止める手段を調べている人がいたのだという。

その人物は何と、第四巻にて猫猫たちを苦しめた翠苓……の師匠なのだという。「そうやって繋がってくるか……」と驚きを禁じ得ない。また、その情報は第四巻の最後の仮死薬を飲んで生き残った少年・趙迂であったこともまた、彼が今後の展開に関与してくることを示唆しているような気がしてならない。

 

またヤブ医者の故郷にて作られていた紙の話題までも物語に絡んでくる。覚えていないという方も、作品を読み進めていくと自然と思い出すはずだ。

紙はかなり貴重なものであると作中で描かれている。しかし、その制作に辺り、数多くの問題が発生したというのだ。その話を聞くに辺り、変装した壬氏に連れられて、猫猫も話を聞きに行くことになる。

その事件単体のオチとしては、思わず猫猫がヤケ酒をしたくなるような内容ではあったが、そんな事件までもが全体を通して見ると繋がってくるのだから驚きだ。

 

第四巻まで読んだ人間としては、この第五巻の内容はまだまだ序章に過ぎないのだろうなと思う。話のスケールが次々と広がっていくという予感が、読み終えた後の余韻として押し寄せてくる。

第五巻はおそらくまだまだ序章に過ぎないのだろう。今後の展開に期待しつつ、この記事を締めさせていただく。

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