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魔王学院の不適合者2 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

殺したぐらいで、俺が死ぬとでも思ったか

情報

作者:秋

イラスト:しずまよしのり

2020夏アニメ化:第五話第六話第七話

ざっくりあらすじ

学院内に蔓延る統一派と魔皇族の争いに、彼自身の意思とは関係なく巻き込まれていく魔王。しかし、道理すらも破壊し尽くす魔王にとっては、そんなもの些事に過ぎないのであった……。

感想などなど

学院生活ついでに時空を操る神を殺して、悲しき運命に翻弄されて引き裂かれそうになっていた姉妹――正確に言うと、魔眼を持つ少女と人形だが――二人を救ってしまった。ここまでチートが突き抜けてしまうと、あらゆる矛盾した台詞すらも格好よく見えてしまう。

神と対等、いや越えてしまった魔王の前では、あらゆる理屈も道理も破壊されていく。その力を二千年前には平和のために使った彼の生き様は、死に様まで含めて格好いいと言わざるを得ないだろう。

そんな魔王による学園生活は、道理やら何やらを破壊し尽くしながら進んでいく。快感すら覚えるそのストーリーを早速見ていこう。

 

魔眼を持った姉・サーシャと、無口な妹・ミーシャの二人と共に班を組み、白服という不適合者としてのレッテルを貼られながらもリーダーとして、立派を通り超して無茶苦茶な結果を第二巻でも叩き出し続けていく。

第一巻時点で、学院の地下にあるという迷宮(魔王が作った場所のため、隠し通路? まで把握済み)の最下層の王笏という宝を手に入れるという学院の歴史上初の偉業を成し遂げている。さらに七魔皇老を上回る魔法を操り、間違いを指摘するということまでしている。

不適合者なのに。いや、まぁ、読者は彼が魔王であるということを知っているわけだが、作中のモブ達は「白服なのに!」という驚きの声を上げる。学院が不適合者とした相手を魔王と思うような人物はそうそういないだろう。

しかし、第二巻にして例外が二人ほど現れることになる。

一人は統一派なる派閥に所属するミサ・イリオローグ。統一派というのは、皇族の特権を強める皇族至上主義を掲げる皇族派と対をなし、皇族と混血の分け隔てをなくそうとする派閥のことを指している。

ここで言う皇族というのは、魔王である始祖の血を完全に受け継いでいるとされている者のことだ。そして二千年後に転生してくるとされる魔王は、その皇族の中から選ばれてくるということになっている。実際は全く皇族と関係ない混血児の身に転生してきた訳だが、そんなこと知る由もない。

ミサ・イリオローグは統一派として、皇族と混血児間の差別というものをなくすために動く活動家のようなものと思って貰えれば問題ない。そして、そのために命すら賭ける覚悟があると、彼女はたびたび魔王に語る……その覚悟が物語に動きを生みだし、白熱のバトル展開を見せてくれることとなる。

二人目はレイ・グランズドリィ。彼の場合は、「魔王学院に送れて入学して、何となく一番強い人と仲良くしようとしたら魔王だった」というとても希有な人材である。しかも剣の腕に限定すれば、魔王との実力は拮抗しているという恐ろしい輩である。

彼と魔王は何度も剣を交えることになる(最初は剣を持ったレイと、木の枝を持った魔王との戦いではあったが)。あくまで剣の技術に重きを置いた場合には、レイに軍配が上がるような気がしないでもない。しかし、剣が当たっても「骨は硬いぞ」とか良く分からない理屈が押し通ってしまうため、魔王の規格外さが改めて浮き彫りになったという気がしないでもない。

このレイと、二千年前では考えようもなかった男の友情というものが育まれ、物語の展開としては『互いに互いを守ろうとする』想いと、『本気の力をぶつけ合いたい』という想いが熱い展開を生み出してくれた。

 

主人公がチート過ぎる作品では、「どうせ勝つ」という分かりきったことを楽しめるか? が重要になってくると思う。その楽しめるかどうかの差が、どこで生まれるかは人の感性によって異なるだろうが。

本作の魔王の理屈というものは、正直いって滅茶苦茶だ。敵も思わずそう言ってる。

納得は求めてはいけない。納得するための理屈ですら壊してしまうのが、きっと本作の魔王なのだ(?)。その無茶苦茶を是非とも楽しんで欲しいと思う。

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