※ネタバレをしないように書いています。
絶望を断つ刃となれ
情報
作者:吾峠呼世晴
試し読み:鬼滅の刃 5
ざっくりあらすじ
十二鬼月の鬼も現れ、柱の二人も駆けつけて、那田蜘蛛山での戦いも終盤戦に突入。炭治郎ら三人は生き残れるのか?
感想などなど
数多くの鬼殺隊員が乗り込んで、そして死体の山が積み上げられていった那田蜘蛛山。蜘蛛の糸を身体に付けて操る鬼、猛毒を持つ蜘蛛をけしかける蜘蛛みたいな鬼、……まだ新人に過ぎない炭治郎達には厳しい敵ばかりであるように思うが、ギリギリの戦いを制してきた。
そんな炭治郎と伊之助の前に現れたのは、巨大な腕を振り回してくる巨大な鬼。ただ力が強いだけならまだしも、刃が通らないほど固い。これでは倒す手段がないではないか、どうやって倒す? と考えている暇もなく、巨木でぶっとばされてしまう炭治郎。一般人ならこれで死んでいるが、彼もこれまで無駄に鍛錬を積んできた訳ではない。主人公補正もあり、彼は新たな鬼の目の前に落下してきたのであった。
これが第五巻の冒頭部分までのあらすじといったところだろうか。
ただでさえ首を斬らないと死なない鬼との戦闘は、無能力者が能力者に身体能力だけで挑むようなドキドキ感があると個人的に思う。まぁ、伊之助の驚異的な野生の勘とか、炭治郎の人外じみた嗅覚とかを能力に数えられる気もしなくもないが。
この第五巻で炭治郎が戦うことになる鬼も、例に違わず血鬼術を操り、炭治郎を苦しめてくる。
彼が操る術は糸を張り巡らせて、目に見えない斬撃のように切り刻んでくるというもの。他漫画のキャラクターを例えに出すとすれば、HELLSINGのウォルターや、ONEPIECEのイトイトの実の能力者・ドフラミンゴみたいな糸使いである。
しかし、見た目だけならば炭治郎を吹っ飛ばした父と呼ばれていた鬼の方が強そう。
その考えが甘かった……。
有象無象を除いた強い鬼には無惨によって十二鬼月という位付けがなされており、該当する位の数字が眼球に刻まれる。数字が一に近ければ近いほど強いという分かりやすい設定がなされている。
炭治郎と伊之助は巨大で力が強く、しかも簡単には切れないほど固い父さん鬼を、十二鬼月の鬼だと考えた。だがしかし、それは炭治郎達が弱すぎるが故にしてしまった勘違いだった。
鬼の世界において、父さん鬼は大して強くないのだ。
遅れてやってきた柱・冨岡義勇にあっさりと倒される父さん鬼。柱からしてみれば、そいつは十二鬼月には遠く及ばない雑魚。そして柱と主人公一行の間にある実力差をも、同時に教えてくれる。
もしかしてこの山には十二鬼月はいないのか?
と思った矢先に、眼球の数字を見せつけてくる鬼・累。柱はまだ遠い。炭治郎は妹の禰津子を庇いつつ、この累を狩らなければいけない。そして彼の十二鬼月としての実力がまざまざと見せつけられることとなる。
まず技である糸による攻撃が早くて固くて避けられない。その固さはあっさりと刀が折れてしまったことから分かっていただけるはずだ。糸ですら切れないのに、首が切れるはずもなかろう。しかも刀は折れている。
そんな累は予想外の言葉を吐く。「禰津子が欲しい」「家族にする」と。
禰津子は鬼と化してもなお炭治郎のことを兄として慕い、これまでピンチの時は共に戦ってくれた。そんな家族愛の素晴らしさに心を打たれ、その愛を自分のものにしたいと考えたようだ。
家族という血のつながりは、簡単にすげ替えられるようなものではない。長い時間をかけて育まれていくべきものだ。だが、この累はそのことを分かっていない。恐怖で縛り付け、言うことを聞く従順な関係性こそが家族愛だと彼は語った。
鬼の性格は、記憶がないはずの人だった頃のものに引っ張られる。彼は一体、人だった頃にどんな経験をしたのだろうか。
そういえば当たり前のように『柱』という言葉を使ってしまった。
第五巻、那田蜘蛛山での戦いが終わった後に初出であり、鬼殺隊における最強の実力者達を指した名称である。その実力の高さというものは、この那田蜘蛛山編で見せつけられたことだろう。
一癖も二癖もある面々だが、今後の戦いにおいて彼らが重要な役割を持つことは想像するまでもない。