工大生のメモ帳

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魔法使い黎明期2 魔力屋さんと恋の予感 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

魔法使いになりたい

情報

作者:虎走かける

イラスト:いわさきたかし

試し読み:魔法使い黎明期 2 魔力屋さんと恋の予感

ざっくりあらすじ

「なんでもいいから魔法を使って、村に貢献をする」という課題を達成するために、それぞれが得意を生かして働き始める。未だに魔法がまともに使えないセービルは、無尽蔵にある魔力を提供する魔力屋を始める

感想などなど

本作は「ゼロから始める魔法の書」の続編となり、ゼロや傭兵もしっかり登場する。その辺りはネタバレになると思い、第一巻の感想では書かないでおいた。「ゼロと傭兵のいちゃいちゃが見たかった」という方は安心して読み進めて欲しい。

といってもゼロと傭兵の二人は主人公ではない。

セービルの父は、ゼロの兄であり、かつ【ゼロの書】を盗み出して戦争を起こした大罪人ということが明かされた。さらに情報はそれだけにとどまらず、少年は人を殺したことがあること――母親が目の前で殺されたこと――なかなかに衝撃的な過去が一気にゼロの口から語られていく。

「少年は人を殺した」と書いたが、それはあまり正確ではない。少年が持っている無尽蔵な魔力を欲した魔女が、彼に触れて魔力を奪おうとした際、制御しきれずに魔力を奪いすぎて死んだのだ。魔力を過剰に摂取すると、肌から血を吹き出しながら死ぬというのだから、彼の目の前で魔女はそういう死に方をしたのだろう。

「母親が目の前で殺された」というのもまた、彼の無尽蔵な魔力を欲した魔女が、彼を脅迫する際に殺したようだ。人間の欲深さは、これほど惨たらしい結果を生むのだと心が痛む。

そんな経験から、ぜービルは自分を責めた。自分のせいで魔女も母も死んだのだ、自分には幸せになる権利はないと考え、苦しく辛い環境に自分を置くことを罰として受け入れるようになった。むしろ率先して地獄へと足を踏み入れるようになった。

そんな彼を救うためにはどうすれば良いか。

記憶を消して人生をやり直すしかない!

 

という訳でぜービルは魔法学校に入り、魔法使いになるために勉学に励んでいる。といっても退学寸前なのだが。

勘違いされているかもしれないが、ぜービル達の特別実習は続いている。村に辿り着くまでに、彼らを悪の道に誘惑する数々のトラップを潜り抜けたが、「なんでもいいから魔法を使って、村に貢献をする」という課題は達成していない。

そのためにホルトは便利屋、クドーは魔法医、ぜービルは魔力屋として働き、それぞれのやり方で村に貢献することにした。ホルトやクドーは優秀すぎるがために、このような村に飛ばされたので、使える魔法は多く、技術は荒削りながら良く使いこなしている。

問題はぜービルである。無尽蔵な魔力は魅力的だが、基本的にすることがない。ホルトとクドーの補佐をするだめに、魔力を分け与えるだけ……基本的に家の家事をこなしている時間の方が多い。

そんなぜービルの状況に危機感を覚えたロスは、彼の危機感を煽るために、様々な課題を課していく。人格を形成する子供の頃の記憶がない彼に、目標や努力する理由を与えることで、成長を促そうとした訳だ。

そして引きこもりがちだった彼も、村の人々との距離を少しずつ詰めていく。

 

これはぜービルの成長を、ロスやゼロと共に眺めていく物語とでも言うべきかもしれない。

少しずつぜービルという一人の人間の輪郭がはっきりと形作られ、「魔法使いになる」という漠然とした記憶が、「魔法使いになりたい」という今の気持ちになるまでが大変だった。

タイトルの副題に「恋の予感」と書かれているが、恋というものが理解できなかったローゼルが、「恋をしたかもしれない」という気づきが得られるようになるまで、本当に長く険しい道のりだった。

これからぜービルはどのような魔法使いになるのか。

まだまだ道は厳しく遠いけれど、ロス先生と共に頑張ってほしいものである。シリアスな設定に対して、ほっこりとするような内容だった(ただ不穏な色は濃くなっているんだよなぁ……)。

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