※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
「私は私が嫌いなんだよ」
情報
作者:鴨志田一
イラスト:溝口ケージ
ざっくりあらすじ
夏休み直前。梓川咲太は初恋の相手、牧之原翔子と出会う。
しかし彼女は今大学生であるはずであって……。目の前にいる彼女はどう見ても女子中学生だった。
混乱する咲太。追い打ちをかけるように思春期症候群による不可思議な事件が巻き起こる。今回は科学部所属の頼れる女友達・双葉理央が二人に増える?!
咲太は二人のうちの片方を家に匿うことに……。そこに麻衣先輩も乱入し、家は大混乱。果たして事件の収拾はつくのか?
感想などなど
物語の冒頭。あらすじにも示した通り、今まで散々「初恋の相手」として登場していた牧之原翔子が登場。「あぁ、今回はこの子が中学生になってしまってるから、それを解決するのかな」と思いきや、全く関係ない事件を取り扱っていきます。
今回の事件の中心人物は、今まで起こってきた事件を科学的見地からクールにアドバイスしてくれた双葉理央。隠れ巨乳だそうです。これ大事な情報なので、頭にインプットしておいて下さい。冗談じゃないですよ。
まぁ、そんな彼女が二人に分裂しているというのが今回の事件の概要です。外見も何もかもが同じ二人、大半の人がドッペルゲンガーを思い浮かべるのではないでしょうか。
ドッペルゲンガー。都市伝説としてはかなり一般的に知られていると思いますが、簡単に説明すると「自分と全く同じ外見の人間がいて、それに出会ってしまうと死ぬ」というもの。
もう一人の双葉理央がドッペルゲンガーであると断定できないわけですが、可能ならば会いたくない。それに『本物』と『偽物』が学校に集結、もしくは両親の前に子供が二人というカオスな状況も避けたい。
しかし『偽物』が家に入り浸っているという最悪の状況。ネットカフェを転々としている生活も、金銭的にも貞操的にも危うい。
というわけで梓川咲太の家で同棲するということになるわけです。
ここで「あれ?」と思う人もいるのではないでしょうか。「いや、女友達の家とか行けよ」「男の家に行くなよ」と。
……察してあげてください。まず女友達が(ry
今まで青春症候群にかかった登場人物たちは何かしら心に問題を抱えていました。麻衣先輩はアイドル活動を通してのストレス。古賀朋絵は友達に嫌われたくないという思いや、梓川咲太と別れたくないという思いが具現化して現れていた訳です。
今回の不可思議な事件も青春症候群が原因であることは間違いないでしょう。そしてその中心にいるのは、当然双葉理央。
今までクールに颯爽と事件のアドバイスしてくれて、どこか謎の多い美人女子高生。性格も梓川咲太のあれな言動にも付き合うことができる数少ない人間。かなり奥手ですが、それも可愛らしいといえば可愛らしい。一見大きな問題は抱えていないように思えます。
そんな彼女も……いや、そんなクールを気取っている彼女だからこそ、誰にも相談できないような心の闇を抱えていて、ただただ日常的に鬱憤を積み重ねているのかもしれません。
ここで登場。「下着は手洗いのほうがよかった?」と真顔で尋ね、「女子高生と同棲なんて興奮します」と即答する鋼のメンタルの持ち主であり青春ブタ野郎、咲太。
彼には遠慮だとかありません。しかし優しくない訳ではないのです。
彼は自分のすべきこと、彼女に必要なものを理解して最善策を取っていきます。これは彼にしか解決できない。そう思わせてくれる事件でした。
ほかの作品だとヒロインが優秀だったりすることが多いですが、これほど主人公が主人公らしく、活躍する学園物って珍しい気がします。皆さんどうでしょうか。