※ネタバレをしないように書いています。
ウマ娘達の物語
情報
原作:Cygames
漫画:S. 濃すぎ
試し読み:STARTING GATE! ―ウマ娘プリティーダービー― (3)
ざっくりあらすじ
栗東寮から美浦寮へと移籍するというサイレンススズカ。その理由が分からず、ショックを受けるスペシャルウィーク。周囲の皆も心配する中、サイレンススズカに追いつくためにスペシャルウィークは行動を開始する。
感想などなど
サイレンススズカはあまり自分のことを話そうとはしない。スペシャルウィークは自分というものを前面に押し出して、コミュニケーションを取ろうとするのに対して、正反対なキャラクターといえよう。
そんな二人だからこそ、同室になっても上手くいったのかもしれない。
たとえ、自分のことを話さないとはいえ、スペシャルウィークを気遣わないかといえばそれは違うし、コミュニケーションがゼロかと言われればそれも違う。後輩であるダイワスカーレットやウオッカには慕われているし、オグリキャップに呼び出されたスペシャルウィークを庇うような優しい気概も感じられた。
そんなサイレンススズカには、スズカなりの悩みや問題を抱えていたことが、段々と分かっていく。読者としては度々見せた不穏な表情で察していたかもしれないが、この第三巻ではサイレンススズカの過去に、スペシャルウィークと共に迫っていく。
どうやらサイレンススズカは昔、かなり空気を読まない問題児だったらしい。
サイレンススズカは史実でもかなりの大逃げだ。その誰も寄せ付けず、駆け引きに持ち込まない絶対的な速さは、あまりにも圧倒的だった。
学園に入学したばかりであったとしても、その速さは頭一つ抜きんでていた。それゆえに彼女は先輩やトレーナー陣から一目置かれていた。
そんな先頭を譲らない速さを生んでいるのは、ただ速さだけを追い求め、周囲との関係性を断ってきたスズカの性格が一端だったのだろう。彼女は周囲と関係性を築くことを拒み、たった一人孤独な学園生活を過ごしていた。
そんな彼女のルームメイトとしてやって来たのが、スペシャルウィークだ。サイレンススズカにとって、彼女の存在は煩わしかったのか? そんなことはないだろう。これまでの彼女のしてきた行動が、それを物語っている。
たった一人、速さだけを追い求めていた昔の彼女はもういない。
そんな彼女が、どうして寮を移動しようとしているのか?
ヒシアマゾン先輩に願い出て、彼女の課す試験合格できれば、今いる栗東寮を離れ、美浦寮へと移籍する。いろいろあって、レースにてエアグルーヴに勝つことができれば寮の移籍を認めるという話にまとまった。
そこまでしてサイレンススズカが移籍を求める理由が、やはり分からない。
その理由を知りたいのは、誰よりも渦中にいるスペシャルウィークだろう。その原因を知ることができれば、彼女と一緒にいることができるかもしれない。まだまだ一緒にしたい話、したいことはたくさんあるのだから。
だが、その理由を誰も教えてくれない。考えに考えても、その理由がどうしても分からない。ダイワスカーレットも、ウオッカも、トウカイテイオーも同じだ。
それぞれがサイレンススズカのためを思い行動を開始した。
例えば。
ダイワスカーレットとウオッカは、寮の移籍を決めるエアグルーヴとのレースに、サイレンススズカを向かわせないという作戦を決行。人参を餌にして釣るというギャグみたいな方法を得たんだが、結果としてオグリキャップしか釣れないというオチで終わった。
ゴールドシップは金稼ぎで忙しい。トウカイテイオーは観戦。そして肝心かなめのスペシャルウィークがとった作戦は、これ以上ないくらい面白いものであった。ラストシーンは見逃せない。
第四巻への期待が膨らむ、風呂敷を広げまくった第三巻であった。