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【漫画】さんかく窓の外側は夜5 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻

※ネタバレをしないように書いています。

霊感サスペンス・ミステリ

情報

作者:ヤマシタトモコ

試し読み:さんかく窓の外側は夜 5

ざっくりあらすじ

冷川の過去を知る半澤刑事は、不思議な事件に幾つも関わっていながらも、全く信じない。人も、不思議な現象も、全てを疑う力を持って、彼はそれらを解決してきた。そんな凄腕刑事が、非浦英莉可と出会ってしまい――。

感想などなど

人間関係は簡単に分類できるものではない。人を殺した者を犯罪者と呼ぶが、その犯罪者のことを救世主とする者もいるように、単純な物差しで測れない。三角と冷川の関係性を相棒と定義づけることは簡単だが、それぞれが相手のことをどう思っているのか。

これはとても難しい問題だ。

三角は冷川のことを救いたいと思っている。しかし、三角は冷川のことをほとんど理解していない。救うためには彼のことを理解することから始めなければいけないと、様々なことを考えていた。

一方、冷川は三角に紐を付けて、自分だけのものにしようとしている。彼にとって、必要ない人間関係は切り捨てても構わない、嫌われても問題ないと思っている。他人に対して壁を作り、群れることを極端に嫌っており、人ととしての何かが欠落しているかのような印象を受ける。

「花が綺麗ということを、理解はしている」……この台詞が彼の心理風景を良く表しているような気がする。きっと彼は、花が綺麗だと思ったことはないのだろう。ただの知識としてしか、花の綺麗さを知らない。

彼がそうなってしまったのには、過去が深く関係しており、その過去を間近で視ていた人間が、半澤刑事であったということが分かるのは、この第五巻の終盤である。その辺りのことは、第六巻の感想で、未来の自分が書いてくれることだろう。

 

この第五巻では、これまで交わらなかったものが交わっていくことになる。

例えば。

冷川と三角が仕事をしてきたことは言わずもがな。だが、インチキ占い師・迎系多と三角のコンビでも、幾つか仕事をこなしている。そうすると、冷川と迎の二人、それぞれの霊に対するスタンスは正反対であることが分かる。

霊との対話は無駄だと考えている冷川、霊との対話を通じて除霊していく迎。

そんな迎と冷川、そして三角の三人で仕事をこなすこととなった。依頼された内容は、いつも一緒に遊んでいる友達の中に、一人だけ記憶にない何者かがいるというものだ。一緒に遊んでいるはずなのに、その一人がどうしてそこにいるのか分からない。でもその一人が誰のことを指しているのか分からない。その違和感は、恐怖と表裏一体である。

そんな謎の一人を探し出し、除霊する……掴んで投げ飛ばそうとする冷川を制止し、ゆっくりと声をかけて除霊していく迎を、冷川はどういう思いをして見つめているのか? その心理が分かる日は来るのだろうか。

一方、半澤刑事はいつも事件に追われている。そんな彼の思考の片隅には、冷川の過去、凄惨な事件がこびりついている。冷川は被害者なのか? それとも加害者なのか? そんな問答が行われている。

そんな半澤が、非浦英莉可と偶然にも出会ってしまう。

……それは偶然としか言えなかった。非浦英莉可は過去に自分が起こした事件現場に戻ってきていて、半澤も同じような理由であった。そこでたまたま非浦英莉可が学生証を落としていなければ、半澤は彼女のことを気にしなかったかもしれない。

そこに半澤の妻がいなければ、非浦英莉可がこれ以上の罪を重ねなくてもよかったかもしれない。

色々な偶然が重なって、悲劇は起きた。

この悲劇に救いはあるのか?

 

悲劇の概要は単純だ。非浦英莉可が半澤の妻を呪ったのだ。最初は半澤を呪おうとしたのだ、自分の過去に起こした犯罪を指摘してきた刑事に対する威嚇行動だったのかもしれない。

だが、半澤には通用しなかった。彼の「信じない心」は霊に対する特攻であり、呪いに対しても絶対的な力を発揮したのだ。代わりに呪いが通ったのは、半澤の妻であった。

このままでは登場人物が皆、不幸になってしまう。霊がいて、絶妙なバランスで保たれていた日常が、一気に瓦解していく音がする。ここから物語がどう展開していくのか、怒濤の展開に期待である。

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