まず最初に
ザイが基地を作る!?
どうやら、ただ何も考えず向かってくるのではなく、戦略を立てて来ているようです。ただザイ単体でも脅威だというのに、日本の近くに基地が作られ、絶えず日本に攻めて来ようものなら、もう勝ち目はないでしょう。
一応、その辺の戦力関係の話は「用語・人物解説」にも書いているので確認して下さい。
これまでは、アニマ達との関係性が中心といえる物語も、今回からザイとの戦いに焦点が置かれて描かれていく。……とその前にファントムの関係性をどうにかしないといけないか。
さて、第二巻中盤と言っても問題ありません。解説のしがいのある物語の感想・解説を書いていきましょう。
用語・人物解説
鳴谷 慧
- 学校に行ってないのか? と思われるかも知れないが、今はちょうど夏休みの時期である。
- しかし、一学期の途中という中途半端な時期に入学したため、夏休みにも関わらず ”補講” という形で時々、高校に行っている。
- 学校での描写は原作でもほとんどないので、妄想でしか補えない。
宋 明華
- もうすっかり街に馴染んでいる。もはや主婦のムーブである。
- 原作ではもっと彼女との絡みが描かれているが、どうやらアニメでは省かれたようだ。単純に尺の問題だろう。
- 彼女と慧のデートができる日は来るのだろうか……悲しいなぁ。
グリペン
- 相変わらず箸の使い方は教わっていないようだ。まぁ、教えてくれる人がいないし、仕方がない。
- 彼女はずっと自身が弱いことを気にしている。慧との課題の話など分かりやすいだろう。
- アニメでは ”記憶の混濁” に関する情報が省かれている。
イーグル
- 原作既読者からしてみれば、彼女が幸せそうにしている姿を見ていると、涙腺が緩む……自分だけだろうか?
- 彼女には ”人類の救済” レベルの人格矯正は行われていない。せいぜい人は守るべき対象程度の教育ではないか? と個人的には思う。
- イーグルは良い子(決して書くことに困ったわけではない)。
ファントム
- 百年を超えるシミュレーションを繰り返すことで、安全性の実証が行われたアニマ一号機。
- やはり研究者としてのネックは「人類に対する裏切り」だったのだろう。それが起きないことを確かめるためのシミュレーションである。
- 彼女に関しては処理能力が頭一つズバ抜けている。だからこその今回の作戦の肝は彼女となった。
防衛ライン
- アニメで図付きで説明されたいたが、ここで改めて文章にて記述しておこう。
- 現在、沖縄・台湾・フィリピンを結ぶラインが維持されているおかげで、太平洋の航路と空路が守られている(つまり支援を受けやすい状況)。
- しかし、今回基地が作られたのは台湾と沖縄の中間点。前線が潰され、太平洋の航路と空路の安全が断たれれば、支援を受けることもできず、ほぼ日本の負けは決定する。
クラスター弾
- 地対空兵器……というより、これもザイである。ザイがザイを飛ばしているということだろうか。
- 敵編隊の真ん中で自爆し、子弾をばらまくことで攻撃する。
- 通常のザイに加えて、地上からの対空攻撃。今回の戦いは簡単にはいかないようだ(まぁ、いつものことだが)。
注目すべきポイント
ファントムについて
八代通遙はファントムについて簡単に説明する。……。
八代通が言うには、彼女には過度な期待をかけていたようだ。しかし、それだけではないはずである。ザイを素材に作り出した兵器・アニマが人類を裏切るのではないか? という不安もあったはずなのだ。
その結果、彼女に関しては過剰とも言える教育が行われた。その話は、この後、ファントム自身の口から語られるために説明はそこにて示そう。
また、ここでは『ファントムが八代基地でやらかしたこと』の説明が省かれているために、彼女の行き過ぎた ”人類救済思想” が表現し切れていない。流石に重要な話なので、今後どこかしらで描かれるはずであり、彼女の ”やばさ” はそこで理解して貰えるだろう。
「今後どうするか」という問題の解決策は八代通も思いつかないようだ。「距離を取る」と言っても、共に作戦を行う以上、言葉を交わすなどは必要不可欠であり、現実的とはいえない。慧がいなかったらどうなっていたか……想像するだけで恐ろしい。
グリペンとの食事
グリペンと食事をする慧。……。
ただの食事シーンかと思いきや、かなり大事な伏線や設定の話が盛りだくさんである。
まず、「同じ機種からはアニマは一機しか成立しない」という設定。グリペンを廃棄しなければ、新たなグリペン系列のアニマは作れないし、イーグルやファントムも同様である。原作では一応、その理由も説明されていた。
どうやら「個々の機体で『魂』を創造することは難しい」ということらしい。……しかし、あくまで誰かの推測であり、正しいかどうかは分からない。
次に、「他の国もアニマを作っている」という設定・伏線。今後、海外のアニマも登場する。もしかすると敵としてかもしれないし、仲間としてかもしれない。今後に期待しておこう。
というより、アニマを作れない国は滅亡する。なにせ唯一の対抗手段なのだ。また、アニマを作るためには一度ザイを落とす兵力、核を回収しアニマを制作するほどの技術が必要となる。これができる国は世界にどれほど存在するか……。
また、アニメではグリペンの記憶混濁の描写が描かれていない。今後のストーリーに関わってくる訳ではないが、とりあえず記載しておこう。
オフのお買い物
明華と買い物に来た慧。しかし、グリペンからの呼び出しを喰らう。……。
慧はオフの朝八時に明華に起こされ買い物へと向かう。デートというよりは、かなりキツい荷物持ちと言った方が正しい。しかし、明華もそんなことを気にしていたのだろう。今日という日のために、調査し、計画を立てていたのだろう。彼女は電話をする慧の裏でつらつらとデート計画を語る。可愛い。
しかし、慧は日本を守る戦いへと向かう(ただし、明華はそんなことを知らないとする)。彼女の綿密な計画は、彼の行動一つで壊された。悲しいなぁ……今後、二人のデートシーンを見ることはできるのでしょうか。
ザイの前線基地
ザイの前線基地と前線の説明。……。
ザイの基地が脅威のスピードで生成されつつあることが説明される。おそらく中国の大陸のどこかにどうようの基地があるのだろう。それが日本の近くに作られるとなるとどうなるのか? 想像は容易い。日本の壊滅は一瞬だろう。
「用語・人物解説」でも書いたが、ここでも改めて書かせていただく。今回の前線基地が完成すると、前線の図における黄色が壊滅する。すると日本に対する攻めの手が増えることが問題として上げられる。これでは小松に戦力を集中させた意味がないことになってしまうからだ。
太平洋の制空権や航路の安全が断たれるのも問題だろう。現状、太平洋を通して供給される物資が来なくなると戦うことが厳しくなる。
つまり、今回の基地は絶対に落とさなければいけない。
意外な作戦
八代通遙は今回の作戦を説明する。……。
戦闘機は陸上を攻めるものではない。制空権を確保し、爆撃機が爆撃をすることが普通の戦略である。しかし今回の場合、愚鈍な人が操縦する爆撃機をアニマ三機で守ることは不可能。普通の戦い方では基地を落とせないということだ。
ではどうするか?
どうやら爆撃の代わりにミサイルの飽和攻撃を仕掛けるらしい。
だが、それもやはり問題がある。ザイの発するEPCMにより、ミサイルが当たらないのだ。その問題を解消するために、全ミサイルをファントムに操らせよう! というのが今回の作戦である。
まとめると、
- 爆撃ができない代わりに、ミサイルの飽和攻撃を行う。
- EPCMの影響を受けるミサイルをファントムに操らせる。
問題点は、
- ミサイルを操るファントムは自身の身を、自身で守れない。
だからこそ、ファントムは今回の作戦を渋った。グリペン・イーグルを信頼していないのだ。
作戦開始
ファントムは語る。……。
作戦は不穏な空気なまま始まり、慧はファントムに話を持ちかける。するとファントムの過去の話を聞かされることとなる。
どうやら研究者は彼女を使ってシミュレーションを行ったようだ。理由としては「彼女が裏切らないかの調査」「今後の戦闘において役立てるための調査」などなど多数上げられる。
ここで大切となってくるのはやはり ”人類の救済” という言葉だろう。
日本が潰されたとしても、彼女からしてみれば誤差のような話なのだ。百年のシミュレーション内で、日本なんて何度も滅ぼされたはずである。慣れは怖い。
彼女は、そんな重荷を一人で背負っている……と思っているのだ。
開戦
後ろに逃げるファントム。……。
彼女の目的は ”人類の救済” であり、一機でも多くのザイを落とすために生き残ることこそが彼女の行動理念である。決して間違いではないということが厄介だろう。もし、ここでファントムが突っ込んでいたら、おそらく死んでいたからだ。
慧とグリペンの死角からの攻撃。
イーグルが受けた被弾。
知らなかったクラスター弾の存在。
残りわずかなミサイルの数。
特に厄介なのはクラスター弾の存在である。避けるのはかなり難しく、ミサイルの制御に集中しなければならないファントムは動かない的であろう。これまで百年という戦闘訓練を積んできた彼女には、これらのことが容易く分かったのだ。
それでもやはり一番の問題は「イーグル・グリペンを信頼していないファントム」だと言える。まず近づく必要があるのだから、近づく気がないと言われれば、作戦以前の問題だ。
煽り慧
慧はファントムを煽る。……。
唐突である。「性格が悪いのかな?」と思われる人もいるかも知れないが、これも彼なりの作戦だ。脳内で考えていることがアニメでは分からないので、何とも言えないが、今後描かれるだろう。
ここで考えて欲しいのは「ファントムの百年におよぶ経験」である。だからこその状況判断の速さ、どんな手を使ってでも勝つという狡猾さ、遠慮無く無駄と判断したものを切り捨てる思い切りの良さ……などなど。一見すると彼女には何一つ弱点がないように思える。
しかし……彼は逆にそこに弱点を見いだした。今後に期待しておこう。
最後に
第一話の不評が嘘の様に面白いですよね。かなり丁寧に作られているように感じます。BGMしかり、空戦しかり。原作ファンとしても大満足の出来です。
アニメを見た人は原作も買ってしまうのではないでしょうか?
アニメで描き切れていない伏線の数々、明華との絡み、細かな登場人物達の機微などなど、原作で見るべきシーンは多数あります。四巻以降の伏線回収は一気読み必死です。
また、四巻を読んだ人は、絶対その後も買ってしまう……と不穏な予言を残しておきます。四巻の ”美しすぎる” ラストシーンをアニメで見たかったなぁ……。
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