※ネタバレをしないように書いています。
オグリキャップの物語
情報
作者:久住太陽
試し読み:ウマ娘 シンデレラグレイ 3
ざっくりあらすじ
カサマツから中央にやって来たオグリキャップは、日本ダービーを目標に掲げる……が、クラシック登録を逃したために出走すらできないことが分かる。皇帝シンボリルドルフを頼り断られ、自身の脚で常識もルールも覆すために中央で戦っていくことを誓った。
感想などなど
カサマツでのラストラン。中央行きを賭けたゴールドジュニアとのレースは、オグリキャップの勝利で終わった。中央行きを惜しむ声が叫ばれる中――号泣するノルンエース好きやで)、中央へ行くことを宣言したオグリキャップの活躍が、この第三巻から描かれていく。
さて、ここで少しばかり競馬のクラシック制度というものについて説明したい。といっても漫画の説明と、Wikipedia先生の御指導を組み合わせた付け焼き刃であることは念頭に置いて欲しい。
クラシックレースというのは、簡単に言えば伝統と格式のあるレースのことを指す。その中でも特に『事前のクラシック登録を済ませた』『三歳馬限定』で出走が認められるレース……皐月賞、日本ダービー、菊花賞のことはクラシック三冠レースと呼ばれる。
『三歳馬限定』ということもあり、一生に一度しか参加できない。現実のウマの三歳が、ウマ娘世界の何歳になるのか良く分からないが(ゲームの方してるともっと混乱する)。
問題は『事前のクラシック登録を済ませた』という条件である。漫画内では書類審査というように説明されており、クラシックレースの格式の高さを表している。おそらく地方のウマ娘程度がこの登録をしようとしても、できないようになっているのだろう。中央にウマ娘しか出られない節がある。それらルールを決めるURAの役員もそんなことを言っていた。
オグリキャップはそのクラシック登録を逃したのだ。それにより東海ダービーの代わりに日本ダービーの1着を北原に送ろうというオグリキャップの目標は、抱いたその瞬間に砕かれたことになる。
だが、彼女は諦めない。生徒会長にして絶対と謳われた皇帝シンボリルドルフのもとに赴き、日本ダービーを走らせて欲しいと直談判した。それに対するルドルフの答えは非常だ。
「中央を無礼るなよ」
とプリティーとは程遠い顔で告げる。それに対するオグリの答えは、
「ならば実力で覆す」
「常識も……ルールも! この脚で!」
そこからのオグリの活躍と実力は圧巻の一言である。
中央にもともといたエリートウマ娘達にとって、10勝2着2回という超好成績も所詮はカサマツという田舎で遊んでいたにすぎない灰被り姫だ。この中央では地方から来て、大した成績を出せぬまま去って行くウマ娘も珍しくない。そのためかオグリへの当たりもかなり強いものとなっている。
「田舎の砂遊びなんざノーカンだろ」
「尻尾まいて田舎に帰れ」
等々。それに対するオグリの返しは、
「あの砂はダートといって砂遊びをする為のものじゃないんだ」
そんなオグリの天然により砕かれていくいびりの数々。最初はオグリを下に見ていたような面々も、彼女の実力を認めていく流れは気持ちいい。その流れはウマ娘だけでなく、レースを見ていた観客にまで広がっていく。
常識もルールも変えていくといった宣言が、本当になっていく。そういえばこれ史実だった、とふと思い出してしまうようなドラマの連続であった。