工大生のメモ帳

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キノの旅Ⅶ 感想

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作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

世界が美しく感じられる

情報

作者:時雨沢恵一

イラスト:黒星紅白

ざっくりあらすじ

喋れるモトラド(注:二輪車。空を飛ばないものだけを指す)エルメスと共に、世界を旅するキノの物語。

「迷惑な国」「ある愛の国」「川原にて」「冬の話」「森の中のお茶会の話」「嘘つき達の国」「何かをするために」

感想などなど

「迷惑な国」

本作を読みながら、ハウルの動く城の映像が頭に浮かんできました。まぁ、話の内容は似ても似つかない全く違うものなのですが。

今回キノ達訪れた国は、見上げるほどに巨大で、これまた巨大なキャタピラが大地を踏みしめながら動く国だった。超大きな戦車を想像していただければいいだろうか。進む度に地面が揺れ、地上の木々が踏みしめられていく光景は圧巻でしょう。

どうやら移動から生活にかかる全てのエネルギーを、巨大な熱動力源(誰が作ったかなどは不明)でまかなっているようです。中に入ったキノ達の前には、何不自由なく生活する多くの人々の姿がありました。子供達の数も少なからずいるようで、一種の国としての文化や生活が完成しているようです。

そんな生活の裏では、踏み潰されていく多くの何かがあることは知らずに。

 

「ある愛の国」

人種も種族も分類も越えた恋……好きになっちゃったら仕方ないね。

 

「川原にて」

キノのストーカーことシズ様の話。といってもとても短く、国に訪れるということもありません。川原にて語られる昔話……死ぬ機会を失った者達のお話です。

 

「冬の話」

キノが三人の人間を撃ち殺すシーンから物語は始まります。そんなキノを罵る人々とは裏腹に、感謝の言葉を告げる人もいて……おそらく多くの方々の頭に疑問符が浮かぶことでしょう。

これはどういうことなんだ? と。

人を殺して恨まれることはあれど、喜ばれるという状況……ふむ。

死というものに対する考え方は、国や宗教、人によっても異なっていきます。例えばキリスト教では、キリストを信じて徳を積んだものが天国に行くことになっていますが、仏教では輪廻転生の考え方が根底にあるようです(仏教は色々と考え方がありすぎて……)。

今回、キノ達が訪れた国にも独特な死生観があるようで、どうやら『自然治癒以外で病気から回復してはいけない』ようです。もしも手術など受けようものなら、天国(この言い方は恐らく正しくない)に行くことはできないのだという考え方なのでした。

つまり自然回復できないような重病にかかったとしても、ただ苦しんで死んでいくことを待つことしかできないということなのです。

そんな患者を殺してあげて欲しい……それが旅人に対して国がお願いしたことだった……。安楽死、皆さんはどう考えますでしょうか。

 

「森の中のお茶会の話」

師匠の話。まぁ、平凡な老夫婦が森の中で生活できる訳ないですよね。

 

「嘘つき達の国」

人を助けるための優しい嘘は、きっとあると思うのです。これはそんな優しい嘘の話。

キノが訪れた国は、数年前に国王一族を皆殺し――つまり革命が成功した国でした。その革命により流れた血は、新たな悲劇を生みました。それらの悲しみを少しでも和らげるためについた嘘、そして物語の終盤まで一切気の抜けない構成の上手さ……最高の読了感でした。

 

「何かをするために」

キノは実はキノではなくて、キノが救おうとした少女×××××がキノを名乗っている……意味が分からないという方は、キノ第一巻の「大人の国」を再度読んで下さい。

つまりキノの犠牲の下で、少女は外に出ることができたのです。今回は、そんな少女がキノの故郷である国にやって来た話です。キノと名乗った旅人の男にも、帰るべき故郷があり、家族がいた……当たり前のそんな事実に気付かされ、キノがキノとなる重要な話でもありました。

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