※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
平和を願う気持ちは同じ
情報
作者:細音啓
イラスト:猫鍋蒼
試し読み:キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 4
ざっくりあらすじ
働き過ぎということで、長期休暇を命令されたミスミス隊長の率いる部隊。星霊に憑かれてしまったしまったミスミス隊長の対策を考える良い機会ということで、帝国から遠く離れた帝都ユンメルゲンにやって来るが、そこで偶然にもイスカが過去に助けた魔女シスベルと遭遇してしまう。
感想などなど
イスカは平和を目指すために純血種の魔女を捕らえ、皇庁と帝国上層部を脅して和平条約を結ぼうとしている。皇庁に対しては「王族の娘を返さないぞ」と、帝国上層部には「このまま脱獄させるぞ」と。
かなり無茶苦茶な作戦であると思う。しかし、それを可能にできそうな実力がイスカにはあった。二年前に帝国の監獄から魔女を逃がしたのはイスカであって、皇庁の最高戦力アリスを退けたのだから。
だがしかし、世界は広い。力でねじ伏せることができる程、単純な構造もしていない。
第四巻ではイスカの野望を叶えることができそうな希望を少し、逆に叶えるために越えなければならない壁の大きさというものを再認識する内容となっている。
イスカは二年前に監獄に囚われた幼い魔女を助け、使徒聖の称号を剥奪された。監獄に二年ほど入っていたが、上の判断により(色々と思いがあるようだが明かされていない)、一兵として再び戦場に繰り出される。かつての仲間であるミスミスやジンもいる部隊に配属されて。
監獄で過ごした時間は、彼の考えを変えるには至らず、和平条約を結ばせるという作戦に変更されなかったらしい。戦場では王家の魔女を捕らえるということを念頭に置いて戦っている。
しかし、ここ最近の彼の脳裏にはアリスのことがこびりついていた。まぁ、色々あったから……裸も見ちゃったし、高級ホテルで一夜を共にしたし、アリスはイスカへの思い垂れ流しだし。
しかもミスミス隊長が魔女になってしまうという緊急事態まで発生する。このことが帝国に見つかれば、ミスミス隊長の人生は幕を閉じることとなるだろう。だからこそイスカもジンも音々も、彼女が魔女になった事実を隠す修羅の道を選んだ。
そんな折に舞い込んだ、『長期休暇の命令』は渡りに船である。どうやらイスカ達は働き過ぎたようだ。命を賭けた肉体仕事な訳だから、休むことも仕事ということなのだろう。
たっぷり渡された休暇の日数は六十日。これを有効的に活用し、ミスミス隊長が魔女であることをバレないようにするための対策を考えつつ、ついでにバカンスでも楽しもうということで、やって来たのは帝都ユンメルゲン。ホテルが建ち並び、美しいビーチで飲むビールは最高だ。
……まぁ、当分バカンスを優先してもバチは当たらないだろう。
しかし優雅なバカンスはすぐに終わりを告げる。休暇って何だっけ? と疑問符が浮かびまくる休暇の始まりである。
厄介事は魔女が持ってくる。例、アリス。
だが第四巻は例外である。シスベルという、過去イスカに救われた魔女がイスカと出会ってしまい、シスベルが実はイスカが捕らえようとしている純血種の魔女であることが判明して、シスベルはイスカを自分の護衛として引き入れようとしていることが判明して……さらに皇庁の闇という闇がドロドロと溢れ出てくる度に、イスカの休暇が終わりを告げる鐘の音が鳴り響く。
シスベルは静かに語る。「皇庁も一枚岩ではない」と。「女王の命が危ない」と。
はっきり言って帝国のイスカが関わりようのないことである。だが、シスベルはそれに巻き込もうとしてくる。冷酷になりきれない優しすぎるイスカは、どうにも拒絶しきれない。なにせ目の前にいる魔女は、求め続けた純血種。攫って和平条約の犠牲にすることも可能である。
これ以上の拒絶はない。だが、イスカはその道を選ばなかった。
そんな状況に仮面卿にアリスに帝国が加わって、休暇は完全に終わり、銃声と星霊の魔法が飛び交う戦場へと早変わりを遂げる。短い休暇であった。