工大生のメモ帳

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安達としまむら3 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

関係が、少しだけ変わる日

情報

作者:入間人間

イラスト:のん

ざっくりあらすじ

安達としまむら、二人の関係が変わっていく日常。

「私に相応しいチョコを決めてください」「太陽に伸びる輝き ヘリオトロープ」「過去を紡ぐ茨 オールドローズ」「そして聖母を抱擁する愛 マリーゴールド」「桜―いのりかがやくとき―」

感想などなど

「私に相応しいチョコを決めてください」

安達の様子がおかしくなった。原因はバレンタインである。安達という女子高生は、様子がおかしくなることで季節のイベントの訪れを知らせてくれるのかもしれない。自然か形でチョコレート交換を実現させたいという安達の策略により、不自然な形でのチョコレート交換が実現された。

チョコレートは特別な人に渡すという印象を抱いている人は、少なくないのではないだろうか。特に男の場合、女性にチョコを貰うという固定観念がある。高校生が期待していないと口先だけで言いながら、下駄箱にチョコが入っていることを期待していたりするのだ。

同性同士という場合、友チョコという位置づけになるのだろう。そこまで深い意味はなく、日頃の感謝とかそういうこともあまり考えず、漠然とチョコを交換し合って、「おいしい」と感想を言い合う。いつも過ごす楽しい時間の延長線上に、バレンタインというイベントが重なっただけ。

しかし、安達にとってのバレンタインは、そんな単純に考えられるような物事ではないらしい。テレビで放送された星座占いの結果に一喜一憂し、しまむらに首を傾げられつつ、バレンタインの日は近づいてくる。

そんな安達の表情の変化が、どこか微笑ましい。

 

「太陽に伸びる輝き ヘリオトロープ」

ヘリオトロープとは、フランス語で「恋の花」との別名がつけられた美しい紫色の花である。花言葉は「献身的な愛」だ。ラブコメである本作に相応しい花であろう。

安達はしまむらと無事にバレンタインにチョコを交換し、一緒に遊びに行く約束をした。そんなバレンタインまで、あと十日ほど時間がある。しまむらにとって、その十日間は大したことのない日常かもしれないが、安達にとってはそれはそれは大変な時間の幕開けである。

まずしまむらがどんなチョコが好きなのか調査しなければいけない。「聞けばいいじゃん」その通り。だが聞くために、安達の様子がおかしくなる必要がある。

次にチョコを作るか、手作りするか? 手作りは重いよね、と言っていた気がするが、星座占いに作れとか言われたら作らざるを得ない。結果として、安達は料理をほとんどしたことがなく、不器用であるという事実が判明だけして幕を閉じた。不味い手作りを喰わせるより、安定した美味しさの店の奴を買った方が安心である。

さらに、安達との距離を近づけるための方策も欠かさない。たまには髪型を変えてみたり、こう色々と頑張っている。同時に挙動不審度も増している気がするが、しまむらはそれすらも受け入れる大きな包容力の持ち主であることを、読者は知っている。

頑張れ、安達。決戦はバレンタインだぞ。

 

「過去を紡ぐ茨 オールドローズ」

安達が頑張っている姿を見つつ、彼女は幼い頃の親友と会っていた。まぁ、別に、彼女がどこの誰と会っていようが知ったことではない。何だかんだで明るく世話焼きなお姉ちゃんのしまむらには、仲のいい人がそこそこいるのだ。

しかし、今のしまむらと過去のしまむらは違う。

成長したのか、はたまた退化か。その辺りは人によって捉え方が違うだろうが、昔仲が良かったからといって、今も昔のような距離感で接することができるかと言われれば、答えは否である。一生の友達は、一生かけなければ作れないのだ。

安達としまむらの間にある空気感とはまた違った感じの会話劇が繰り広げられ、掘り返されていく過去が、茨のようにしまむらを刺してくる。その茨との向き合い方を、最後にしまむらは決めたのだ。

これはそういうエピソードだと思う。

 

「そして聖母を抱擁する愛 マリーゴールド」

バレンタイン。約束した通り、一緒の時間を過ごすことになった。これまであった障害は、障害と呼ぶのもおこがましいほどにどうでもいいものだったと、振り返ってみると笑ってしまう。

二人にとっての今日という日の記憶は、いつか例え会えなくなって、過去になっても茨にはならない。そんな気がする。

 

「桜―いのりかがやくとき―」

進級した。春というのは別れと出会いの季節というけれど、春になっても変わらない日常だってあるのだ。珍しい安達の表情が、見ることのできるラストカットは微笑ましい。

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