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キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦7 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

平和を願う気持ちは同じ

情報

作者:細音啓

イラスト:猫鍋蒼

試し読み:キミと僕の最後の戦場、あるいは世界が始まる聖戦 7

ざっくりあらすじ

イリ-ティアが女王を庇って斬り殺され、使徒聖第一席のヨハイムが純血種である彼女を連れ去ってしまう。そんな光景を目撃したアリスは、帝国への怒りを露わにし、皆殺しにすることを決意する。

感想などなど

使徒聖と星霊使い達の殺し合いが始まった。どちらが死んでもおかしくない戦況に、互いが互いを化け物と評し合う奇妙な関係性。そこには敵に対する敬意などない。アリスとイスカの関係というのが、戦争においては異常と言えるのかもしれない。

元使徒聖イスカ 対 ヒュドラ家当主タリスマン

使徒聖第三席『降り注ぐ嵐』冥 対 キッシング・ゾア・ネビュリス九世

使徒聖第五席、璃洒 対 仮面卿

使徒聖第八席『神の見えざる手』ネームレス 対 ゾア家当主グロウリィ

使徒聖第一席ヨハイム 対 女王

という錚々たる者同士の対決が繰り広げられていく。イスカとタリスマンについては第六巻から戦い続けているし、キッシングに関しては第二巻でイスカと死闘を繰り広げていたし、ネームレスはアリスと渡り合ってたし……何となく能力が割れている者もいる。

今回注目したいのは、能力が割れていない初顔の面々であろう。

お調子者のように無邪気な顔を見せる冥は、二つ名『降り注ぐ嵐』に相応しい逃げ場のない絶対の暴力というものを見せつけてくれた。あのキッシングが限界まで追い詰められるほどである。

ミスミスと同期で上司の璃洒は、これまで参謀としての姿しか描かれていなかった。そんな彼女の裏の顔は、恐ろしい闇が見え隠れする。仮面卿がその余裕ある顔を歪めるほどに。頭だけでなく戦闘の面でも、仮面卿に全く引けを取らないというのは、さすがは使徒聖とでも言うべきだろうか。

ネームレスと相対するゾア家当主グロウリィは、自ら無敵を名乗る。その名乗りに嘘はなく、ネームレスの攻撃の一切が当たらない。無効化されているのか? 数々の疑問が浮かぶが、星霊というのは元来、謎多きエネルギーであるということは忘れてはいけない。当主になるからには、それ相応の力を有していなければならないのだ。

そしてメインは女王対ヨハイムと言っていいだろう。これまで最強と言われてきた女王の能力が明かされると同時に、ヨハイムの実力というのも明らかにされていく。天帝の傍を離れず、第一席を冠された男……彼の前に立って、生き残れる者などいないのだ。

 

そんな戦闘があらゆる場所で同時に発生し、城は壊滅状態。イリ-ティアの策略により、遅れて登場せざるを得なかったアリスは、そんな城を見て絶望する。星霊による守りは意味をなしておらず、やっとのことで駆けつけた女王は、ヨハイムに負けていた。

最後、女王が切り捨てられるという時に、女王を庇い救ったのは、この状況を作り上げた黒幕のイリ-ティアであった。イリ-ティアの鮮血がそこら一帯に飛び散った。アリスはそんなイリ-ティアを怪しんだことを、強く強く後悔する。

帝国兵は殲滅しなければいけない。当然イスカも……。

彼女の怒りは頂点に達し、イスカと全力のアリスの戦う場が用意された。

純血種の一人が攫われ、女王も深手を負うという皇庁にとって、これ以上ないほどに最悪な結末を辿りつつある。しかしこれは表向き、裏ではシスベルも攫われているし、タリスマンの筋書き通りに進んでいく。

この状況をひっくり返せる者は誰か?

人々は救世主を求めていた。

戦争は総力戦へと向かいつつある。そして迎えるはどちらかの滅亡であろう。イスカはそんな未来は望んでいない。アリスも望んでいなかった。

ここから先、歴史がどのような道筋を辿るのかは、誰も予想できないであろう。全ての策略が動き出した第七巻であった。

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