工大生のメモ帳

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キーリⅣ 長い夜は深淵のほとりで 感想

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます(一巻の感想はこちら→キーリ 死者達は荒野に眠る 感想 - 工大生のメモ帳

大切なものを探す旅に出た

情報

作者:壁井ユカコ

イラスト:田上俊介

ざっくりあらすじ

人を探すために一人、キーリを置いて旅に出たハーヴェイ。ベアトリクスと兵長とともに東の町で過ごしす一年半という長い間、ハーヴェイから何一つ連絡もなく、キーリは十六歳になった。

感想などなど

街を守るために自らの肉体を犠牲にしてまで(まぁ、死なないんですけど)、街を守ることに成功。めでたし、めでたしからの、まさかのキーリを置いてハーヴェイ一人旅に出るというラストを迎えた第三巻(キーリⅢ 惑星へ往く囚人たち)。

さらに驚くことに、第四巻では一年半も時間が経過しているという驚き尽くしの展開。

それでけではなく冒頭では、顔面の半分が潰されたハーヴェイが、教会の人間に連れて行かれていきます。不死人であるハーヴェイが連れて行かれたということは、それはつまり……。うぅ、初手絶望の詰め。

しかし、遠く離れたキーリとベアトリクスと兵長達がそんなこと知るよしもなく、キーリ出生の手がかりを元に旅をしています。

はたしてキーリとハーヴェイの旅はもう終わってしまうのでしょうか。

 

ここでちょっとばかしのベアトリクスに関しての復習を。彼女もハーヴェイと同様に不死人であり、ハーヴェイと既知の仲であることがこれまで示唆されてきました。さらにベアトリクスは世間的にはもう既に燃やされて処刑されたはずの<トゥールースの魔女>であることも彼女の口から直接語られています。

何の因縁か。今回キーリ達一行が訪れたのは、そんなベアトリクスが処刑されたことになっている街・トゥールース。彼女が戦後しばしの平和な日常を過ごし、燃やされて処刑しようとして一緒に燃えて消えた街……。

ベアトリクスの心情は複雑でしょう。自分を不死人だからという理由で、火あぶりにして殺そうとした人達の街であり、今はその魔女を殺した街として観光名所のようになっているのですから。

そんな街でも幽霊はいます。今回の幽霊は可愛らしい少女の姿で、キーリやベアトリクスの前にチラチラと姿を見せてきます。どうやら彼女たちを知っている……?

この中で街に来たことがある人物と言えば、以前住んでいたベアトリクスくらいなものでしょう(兵長? 知りません)。

幽霊になる理由の大半が、何か心残りがある場合です。そして、その心残りが解消されれば、幽霊はたちまち消えてしまいます。一巻のキーリ唯一の友達だった幽霊が良い例ですね。彼女は満足して消えていきました。

では今回の幽霊は一体どんな心残りを持って幽霊となっているのでしょうか。そこにはベアトリクスが深く関わってきます。

 

そんなベアトリクスの過去が交錯する物語が展開していく一方で。ハーヴェイと言えば、教会に幽閉されていました。幽閉……? 殺されたんじゃないのか、と思われることでしょう。しかし、世の中不死人という存在に疑問を抱いている人も少なからずいるようです。

例えば、キーリと仲が良くなって、その隣にいつもいるハーヴェイの存在を意識してしまっている幼い少年――二巻で出会いました教会上層部の息子であるユーリことユリウスとかですね。

彼は必死に勉強して教会でもそれなりの地位につくことができる立派な二世となったご様子。彼はキーリの居場所を聞き出すために、彼を教会本部から庇い、自分の目の届く所に置いていたようです。

そんな不死人として恐れられるハーヴェイと、教会側の人間の会話が交わされていきます。特段普通の、一見すれば何処にでもあるような怪我人と看病する人間の会話が。

 

さて、ハーヴェイはキーリの母と逃げていたという不死人の男を探していました。おそらく、彼にとっても今会いたい人であり(いや、これは微妙か?)、キーリの父の情報とも合致するかも知れないかなり重要な問題のはずです。

ハーヴェイはキーリを巻き込みたくないがために一人になりました。

しかし、キーリはそんなこと望むでしょうか。一巻ではわざわざ一緒になりたいがために生活を捨て、ハーヴェイを助けるために行動したキーリを忘れてしまったのでしょうか。

そんなキーリの耳に、「顔面を潰されたハーヴェイ似の男が教会に連れて行かれた」という情報が入ってきます。それを知った上で黙っていられるような女性ではないことは、これまでの物語も明らかです。

大教会のある街へとキーリは向かいます。危険なんて知りません。

 

酷い差別を受け、バレれば殺される不死人。それを庇えば、その人も同罪。そのせいで多くの人が命を落とし、多くの涙が流れたことでしょう。多くの幽霊が心残りを残してこの世界を彷徨っていることでしょう。

そんな世界をキーリ達は生きています。さて、ハーヴェイとキーリは無事に再開することができるのか。死の香りはびこる悲しくも、どこか心温まる物語の幕開けです。