※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
小鬼から守る者
情報
作者:蝸牛くも
イラスト:神無月昇
ざっくりあらすじ
牛飼い娘と受付嬢に、秋祭り一緒に回らないかと誘われるゴブリンスレイヤー。そんな平和な日常を過ごす中、裏でうごめく怪しい影……。
感想などなど
第二巻(ゴブリンスレイヤー2 感想)では剣の乙女の目を焼かれ、ゴブリンの慰め物にされていたというかなりエグい過去が明かされました。そんな彼女の心の救いとしてゴブリンスレイヤーはなれたのでしょうか。まぁ、最期の台詞からして、きっと救われたのでしょう。
しかし、ゴブリンを全滅できたからといって事件が解決したというわけではありません。やはり誰かがゴブリン共の手引きをしていたという事態に変わりはないのです。
……ということで迎えた第三巻。ほんわかする平和な日常が続く……とはいかないのは世の常です。
ゴブリンスレイヤーの通うギルドのある街が活気づき、秋祭りの近づきを告げています。そう、例えゴブリンがはびこり、魔王軍だか何だかが世界を滅ぼそうとしていようが、秋祭りの季節はやって来ます。誰もがその祭を心待ちにしている様が見て取れます。
ゴブリンスレイヤーは……まぁ、いつも通りですが。彼のことを少なからず思っている受付嬢と牛飼い娘の心情は、そう単純ではありません。ちょっと考えてみましょう。
まず受付嬢。ゴブリンスレイヤーが冒険者(?)としてギルドに顔を出したのは五年前からです。その頃からゴブリンだけを殺し続ける彼の努力と仕事を認めていた受付嬢が、彼に対して好意を抱いているのは、隠すまでもないでしょう。これまでの間幕で、彼を食事に誘おうとして誘えずにいる描写もありましたし、五年間進展のないことも彼女の口から直接語られています。五年……長いですね。その間、一切進展がないにも関わらず、思い続けている受付嬢が個人的に好きです。
さて次は牛飼い娘。彼との関係性はいわゆる幼なじみです。大抵の物語で幼馴染みは負けヒロインの代名詞のようになっていますが、彼女に関してはどうでしょうか。彼が帰ってこない夜に寝付けず、外に出て黄昏れている様子はどう見ても嫁です。さらに親公認ともなれば、彼女の嫁としての地位は盤石と言っても良いでしょう。
……そんな進展がこれまでなかった二人がゴブリンスレイヤーを誘うという。しかも午前は牛飼い娘、午後は受付嬢というハードスケジュール。
ゴブリンスレイヤーも決して心遣いができない人間ではないということは、これまでの二巻を読めば分かるでしょう。ただ言葉が足りないに過ぎないのです。そんなことを理解しているヒロイン二人は、相も変わらずの鎧姿で祭デートにやってくる彼と共に、楽しい祭を謳歌していきます。
さて、このゴブリンスレイヤーがそんな平和な日常だけで終わるとお思いですか。そんな訳ないじゃないですか。
敵はやはりゴブリン。ようやくと言って良いのでしょうか。これまでの事件の裏側で暗躍していただろう敵が現れます。つまり、水の都の地下にワープを作り、彼らに武器を与え、船の作り方を教えていた輩です。
まぁ、これほどのことをたった一人でできたとは思えませんし、何か大きな影が存在しているだろうことは多くの人が何となく察していただろうと思います。
しかし、ゴブリンスレイヤーはそんな裏側に興味があるのでしょうか。何をするにもゴブリン優先の男が、黒幕を前にしたときどうするのか。能力的にはゴブリン専門に特化した男が一体どのような戦いを見せてくれるのか。
物語はここから動き出すように思います。アニメ化にも恵まれた、面白い作品だと思います。