※ネタバレをしないように書いています。
※これまで(出版順)のネタバレを含みます。
ジンクスを知っているかい?
情報
作者:上遠野浩平
イラスト:緒方剛志
ざっくりあらすじ
ジンクスを売るジンクスショップ。その周囲に集まる力を持った人々の運命の糸。ブギーポップは ”世界の敵” の ”敵” として、泡のように現れる。
感想などなど
十二冊まで読み進めました。長いように思えて、比較的あっという間に読み進められたように思います。
今回はジンクスを販売する店と、それを取り囲む能力者達が巻き起こす一騒動の物語。これまでは人間ドラマ的要素の強かったブギーポップシリーズですが、ここからは能力者バトルの色が強くなってきたように思います。
能力者が大量に出てくるので、そのそれぞれの能力者を理解しなければいけない……と思いきや、出てきた次の瞬間には死んでたりして、目まぐるしく展開は動いていきます。
まずタイトルにもなっているジンクスショップの説明から始めましょう。この店が全ての元凶と言えなくもありません。
ジンクス……ざっくりと縁起担ぎのようなものです。
縁起担ぎを売る?
一見意味が分かりませんが、必ず当たる占いと思って貰えれば分かりやすいかもしれません。生活における簡単な指標があれば助かるという時に、このジンクスショップに行けば、毎度その指標をジンクスとして授けてくれるのです。
例えば、
『赤信号に三回連続で引っかかると、ちょっと良いことが起こる。』
といった感じに。実際にその後、赤信号に三回連続で引っかかれば、ちょっといいことが起こるのです。なくてもいいけれど、あればほんの少し嬉しい。それがこのジンクスショップで売っているジンクスです。
ジンクスを授けてくれる能力者の名は ”オキシジェン”。彼が何かしらの能力を持っていることは明らかですが、その能力の正体とは一体何なのか?
彼の発言は全てが意味深で、かなり謎が多い存在です。さらに多くを語りたがらない性格も、彼というキャラクターの神秘性を高めています。
そんな彼の周りに能力者が集い、何やら嗅ぎ回っていたり、人を殺そうとしたりと慌ただしく、きな臭くなっていきます。そこに割り込む形で浮かび上がるブギーポップ。
さてここで自分は疑問に思います。本作の世界の敵とは一体?
ジンクスショップで働く ”オキシジェン” は一見普通にジンクスを売っているだけなのですが、彼が ”世界の敵” なのでしょうか? それとも他に慌ただしく動き回る有象無象の能力者が ”世界の敵” なのでしょうか?
能力者を何人か紹介しておきましょう。まずは個人的お気に入りから。
”ホワイト・ライアット” こと澄矢雅典。犯罪組織<パスダイム・パラダイス>に雇われた殺し屋の名前です。彼の能力は『冷静さを殺ぎ取る』というものです。
これまた抽象的な能力ですが、実際に彼の殺害方法を見ればかなりエグい。ちょっと想像してみて下さい。一切の冷静さを失った男の行く末を。ただ恐怖と欲求のみに支配された光景を。……。
簡単に殺してくれた方がいいというものです。
彼の目的は裏切り者の殺害。そこで仕事を達成したのはいいのですが、彼は殺した男から興味深い話を聞いて、ジンクスショップと関係を持ってしまいます。
あぁーあ。それが終わりの始まりになろうとは彼には予想もしてなかったでしょうね。彼の前に立ち塞がるのは、世界の敵を殺すためだけに現れるブギーポップなのですから。
さて次は物語の根幹を担うだろう能力者・仲村紀美香。彼女の能力<ギミーシェルター>は……そうですね、『心の壁を作り、認識を阻害する』といったところでしょうか。
例えば、
自分が死んだことを認識しないままで存在し続ければどうなるか?
考えてみましょう。頭が削れて脳が見えている。しかし、そのことに気がつかず生きたままのつもりでいる……。うーむ、グロい。
そんなことを彼女は平気でやってのけまう。
普段は明るい少女である彼女が気味の悪い笑みを浮かべるシーンは、かなりゾッとするものがあります。そんな彼女の目的は「平穏な生活」。……あれ、ジョジョで見たことがあるような……。
それならば能力を放棄しろよ、と自分は思わなくもないのですが、彼女が取った策略はジンクスショップを利用するというものでした。
あぁーあ。また彼女の前に現れるのはブギーポップです。
ここに書いただけでも二人の能力者。”オキシジェン” も入れて後三人ほど能力者が登場する本作。”世界の敵” を殺すために現れるブギーポップの戦いが始まります。