工大生のメモ帳

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ゴブリンスレイヤー9 感想

【前:第八巻】【第一巻】【次:第十巻
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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

頑張れ、女神官

情報

作者:蝸牛くも

イラスト:神無月昇

ざっくりあらすじ

牧場の手伝いで配達に出たゴブリンスレイヤーと牛飼娘は、その道中ゴブリンの大群の襲撃を受ける。一方、ゴブリンスレイヤー不在の一党は見習聖女の託宣により、雪山を目指すことに。そこは氷の魔女が統べる永久の冬の領域だった。

感想などなど

今回は大きく二つの視点で物語は進行していく。

まず一つ目は、我らがゴブリンスレイヤーによるゴブリン討伐である。といっても今回の討伐は討伐というよりは逃亡と呼ぶ方が相応しい。なにせ隣には戦うこともできない牛飼娘がいるのだ。

敵は最弱だが、数だけは多い。牛飼娘を捨てて逃げるなど言語道断、正面から馬鹿正直に挑むのも愚策。

しかも敵はゴブリンだけではない。敵の名はオーガ。

「オーガってどこかで聞いたような?」と思った方は正しい。記念すべき第一巻の遺跡にて戦い、女神官が奇跡のウォールで仲間を守り、ゴブリンスレイヤーが一振りで大打撃を受けながらも、ゲートの巻物で沈めた奴だ。

あの時は、仲間達がいたからこそ勝てたと言える。今回はそう簡単にはいかない。しかも隣には牛飼娘がいる。さらに言うなれば季節は冬。食料も水もまともなものがない中で、過ごす冷たい夜はそれだけで死ねる。

この状況で生きて帰れるのか。ポケットの中にあるものを理解し、最善の策を打ち出していく。

逃げ込んだ先はゴブリンに滅ぼされた村。まともな食料は食い荒らされ、死んだ人の血肉と、ゴブリンの排泄物が見える。池は凍り、井戸へ向かおうにもゴブリンが自分勝手に動き回る。できることは生き残る確立を挙げるだけ。全ては神が転がすサイコロ次第。

緊張の戦いが幕を開ける。

 

一方、ゴブリンスレイヤーがいないいつものメンバーは、見習い聖女の託宣を受け、向かうは雪山。敵は……雪男である。その大きさは三メートルを軽く超える大男達は、雪山の奥に住む野兎達を責め立てていた。

ここで注目すべきはそれだけではない。『託宣があった』という事実と、『春が来る予兆がない』(例年より雪が多い)という状況である。

『託宣』とは、ようは神からのお告げである。内容は雪山へ向かうと言うシンプルなもの。分かりやすいが、行ったからといって何をすれば良いのか分からないので、結局不親切である。だが、神のお導きですよと言わんばかりの野兎達の話や、雪男の登場に、託宣により授かった銀矢や薬の情報と出てくるわ、出てくるわ、ヤバそうな話が。

お察しの通り、状況はヤバい、敵も強い。

さて、考えるべきは作戦である。誰もがそれぞれのポケットを持ち、最善の策を打たねば死ぬ。

まず戦うべき相手は、三人の雪男。人語を操り、その巨体から繰り出される一撃は強烈だ。そんな奴らに対して、女神官に妖精弓手、リザードマンにドワーフ、見習聖女に見習剣士(鼠スレイヤーさん夫婦)と野兎たち……数は多いが、無能は数あわせにもならない。

幸いなことに彼らはあらゆる修羅場をくぐってきた先鋭揃い。さらに言うなれば女神官はゴブリンスレイヤーの隣で冒険(?)を続けて学んできたのだ。ポケットの使い方は実践で学んでいる。しかも可愛い。

そんな二つの視点を行ったり来たりしながら進む物語。だからといって複雑さはない。ストーリーだけは読んでみれば実にシンプルとなっている。それぞれ単体でも楽しめる内容だ。グロさも大分押さえられていたように思う。

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