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【漫画】ザ・ファブル(13) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

プロやからな――

情報

作者:南勝久

試し読み:ザ・ファブル (13)

ざっくりあらすじ

ファブルを殺すために仕掛けた地雷を、踏んでしまったヒナコを救出するために、協力するファブルとウツボ。果たして彼女を救うことはできるのか――大平、ウツボとの因縁ついに終結。

感想などなど

大平の探偵事務所の爆破にファブルを巻き込ませる作戦――普通に避けられて失敗。

山に誘い出して地雷を踏ませる作戦――ヒナコが踏んでしまって失敗。

ヒナコに油断したファブルを撃たせる作戦――ヒナコが自分の両親を殺した犯人が大平だと気付いてしまい裏切られて失敗。

……こうして並べ立ててみると、まともに機能した作戦は最初の爆破のみで(傷一つすらつけていないが)、おそらくメインだった地雷とヒナコが共に寝返ったような状況になって、大平とウツボの前に現れたファブル。

大平達は散々な状況ではあるが一応、自身の命が狙われているというのに、地雷を踏んだヒナコを救うために行動を開始する。もうファブルを殺す気が失せてしまったウツボの協力も取り付けつつ、爆発してしまえば自分もただでは済まないという状況に自らの身を置いた。

その安心感は尋常ではない。

速さには自信があるという彼の言葉を信じたところで第十二巻は終わっている。第十三巻はその後の事後処理が、淡々と描かれていく内容となっている。これまで関わることのなかった若頭も参加し、ファブルは再び日常へと戻っていく。

ヒナコはファブルが言ってくれた言葉を復唱し、自分が立って歩く未来を想像し、これまでの過去を背負って生きていく覚悟を決めた。これから先の生活が、普通であることを願うしかない。

大平は死んだ。ファブルを殺すと決めた時点で、こういう未来になる覚悟はできていたと思う。最初から最後まで、こいつは根っからの悪だった。世間的には子供のために尽くす良い探偵だったのかもしれないが。

ウツボは生き残った。そもそもファブルを殺したいと思ったのは、この仕事に身を置いて、一度は伝説と戦ってみたいというロマンを追い求めたからだろう。彼は完膚なきまでも負けた――彼のこれから先の人生がどうなるかは彼自身分からない。

 

デザイン企画(有)オクトパスは、貝沼という社員が一人減った。貝沼はミサキをストーキングし、最後は殺そうとした屑であったが、ファブルは死んで欲しくなかったと語っている。

こうしていなくなった後の会社を見ていると、その席だけぽっかりと空いている感じがどうにも違和感がある。いなくなってみるとそれほど悪い奴でも――いや、ファブルには悪いが、死んでくれてもよかったかもしれない。

作中の時節は冬。そしてクリスマスパーティが、佐藤の妹宅で開催されることとなった。参加メンバーはわざわざ言うまでもないかもしれないが、佐藤、ヨウコ、社長、ミサキの計四名。もしもここにあの貝沼が参加し、ヨウコのことが気になってしまったとしたら――あ、それはそれで面白そうな展開になるか?

このクリスマスパーティは、佐藤とミサキをくっつけようと画策する社長と、何も気にせず楽しもうとするミサキ、ニコニコする佐藤、その状況を楽しみつつ社長を酔い潰れさせようとするヨウコという形容しがたい状況だ。

それにより普通ではありえないような状況に、クリスマスパーティは変容していく。

前巻のような非日常にどっぷり浸かるのも好きだが、こういう日常に溶け込もうとするファブルの姿も面白い。この平和が続いてくれればいいのだが、巻末の次回予告が不穏過ぎる。

きっと続かない平和なんだな……と思いつつ眺める日常。楽しい巻であった。

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