工大生のメモ帳

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【漫画】ジャンケットバンク6 感想

【前:第五巻】【第一巻】【次:第七巻】

※ネタバレをしないように書いています。

鏡に答えはない

情報

作者:田中一行

試し読み:ジャンケットバンク 6

ざっくりあらすじ

最凶の観察眼を持つ叶黎明と真経津は、ゲーム『アンハッピー・ホーリーグレイル』に挑む。その一方、御手洗は伊藤班・真昼と地下オークション落ちを賭けたギャンブルに臨む。二人の戦いの行方は――。

感想などなど

第五巻は癒やしだったと言わざるを得ない。真経津・獅子神、村雨の三人が協力しているという安心感と、敵である大学生二人の小物感が、「負けるはずがない」「負けてもどうにでもなりそう」という心の余裕を生んだ。

そんな読者の期待に応え、三人は大学生を破産させるレベルで金をせしめた。大学生を追い詰めたギミックが、最後の最後の時になって狙った目が出せるサイコロを使って永遠に勝ち続けるというシンプルさも良い。まぁ、どっちが勝てるか分からないドキドキ感はなかったかもしれないが。

そんな暇つぶしが終わった頃合いで、ゲーム「ジャックポット・ジニー」で雛形春人が餓死し、次のゲームが始まる。相手はこれまでの相手とは比較にならないくらい驚異的な観察眼を持つ叶黎明。その狂気はゲームを見れば嫌でも分かる。

村様は人体を解剖するような変態だが、この叶も人を閉じ込めて観察するという似た方向性の変態である。今回挑むことになるゲーム「アンハッピー・ホーリーグレイル」でも、その変態性は遺憾なく発揮されることとなる。

 

「アンハッピー・ホーリーグレイル」は、少し「サウンド・オブ・サイレンス」に毛色が似ている。「サウンド・オブ・サイレンス」は聞くと耳が潰れるディスクを押しつけるのに対し、今回のゲームは毒を相手に押しつけて飲ませるゲームである。

その押しつけ方がかなり複雑で難しいのだが、そこが面白いポイントでもある。

このゲームには聖水(=解毒剤)が入った瓶が一本、毒が入った瓶が二本の計三本が用意されている。そして入った液体の性質を反転させる(つまり聖杯に聖水を入れると毒に、毒を入れると聖水になる)特製を持つ聖杯が一つ、何の性質も持っていない偽物が二つ、こちらも計三つが用意されている。

プレイヤーは瓶三本を場に並べる『聖水側』と、三つの杯を並べる『聖杯側』に別れる。『聖水側』はどれが聖水か把握した上で、テーブル上に瓶を並べる。『聖杯側』も同様に、テーブルに杯を並べていく。

次に『聖杯側』だったプレイヤーは、場に並んでいる瓶の中から一つ選ぶ。その次に『聖水側』が杯を選ぶ。こうしてできた杯と瓶のセットが公開され、それは『聖杯側』が取得する。これを場にある瓶と杯がなくなるまで、つまりは三回繰り返す。

そして最後に取得したセットに応じた液体を飲む……これを十ラウンド繰り返すのだ。

ここで問題となってくるのが毒と聖杯のセットを取得した場合には聖水を、聖水と聖杯のセットを取得した場合には毒を飲むことになるという点だろう。『聖杯側』の立場で聖水を狙って選んだとしても、『聖水側』が聖杯を選択すれば毒を押しつけられてしまう。逆もまたしかりで、間違って(もしくは狙って)毒を選んでも、『聖水側』が聖杯を選択すれば聖水を飲むことができる。

「サウンド・オブ・サイレンス」の敵だった村雨は、真経津の後ろにいた御手洗の機微を見ることでゼロ秒のディスクを選び続け、それを逆手に取られる形で敗北した。今回は狙ったものを取らせたとしても、自分が相手の策に嵌まって選ばされてしまっては意味がない。

このゲームは一筋縄ではいかないことが分かっていただけただろう。

 

ゲーム「ジャックポット・ジニー」における雛形は残念な男であった。てっきり死に様とか、最後に描いた絵くらいは出てくるものかと思ったが、紙一枚で彼の死は描かれている。ここまで最初と最後で格の差が大きい敵はいただろうか。御手洗の「真経津の負けに嘲笑はいらない」という戦う理由を作ってくれたストーリー的な意味合いは大きいのだろうが。

たとえ負けたとしても、魅力的に描かれるキャラクターというのもいる。勝負に勝って、試合に負けたというような戦いが好きだ。そういった意味で、今回のゲームは最高だった。

叶と真経津の双方の格が落ちていない。どちらが勝っても負けてもおかしくなかった。最後の最後、ギリギリまで分からない戦いが見応え満点のバトルであった。

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