※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
定助の正体が「死んだ吉良と融合した仗世文」だと突き止めた田最環は、定助に対する攻撃を開始。しかし、騙されていたことに気付いた鳩も、田最に対する攻撃を開始した。
感想などなど
田最環は岩人間陣営の悪役として有能であった。接ぎ木というバレようがないと思われた手段で、ロカカカの実が盗まれたことを見抜き、長い時間をかけて吉良と仗世文が犯人であるということを突き止めて見せた。持っているスタンドは攻守ともにバランス良い能力で、しっかりと隙を突いて家族もろとも追い詰めた手腕は見事である。
それに鳩ちゃんがいくらアホとは言え、騙してきたというのは悪役の姿としては立派なものだ。
まぁ、彼はそうして騙してきて、バカにし続けていた鳩に串刺しにされる訳だが。
第十三巻のラスト、額を思い切り突き刺されたシーンは衝撃的であった。それで死なないのは岩人間だからこそ、普通の人なら死んでいる。その後、伸ばしたヒールで壁を上っていく辺り、彼女の身体能力の高さも伺える。モデルだから身体を鍛えたりしてるのかも。
ちなみに東方鳩のスタンドは『ウォーキング・ハート』で、能力は『硬質化したかかとを伸ばす。靴を履いてればそのヒールごと伸びる。長さはおよそ四メートルくらい伸びる』というもの。もしも自分にそのスタンドが出てきたら外れだと思うことだろう。戦闘に特化している訳でもなく、便利な訳でもなく……そんな力を使って、涙を流しながら愛した男・田最環を殺す姿は、中々に来るものがある。
こうして田最環との因縁は幕を閉じた。岩人間も全員倒したし、これで全てが一件落着。
するはずがない。ジョジョリオンはまだまだ続いていく。
話は少し横道に逸れ(後で本筋に絡んで来るかなぁ……)東方常秀がミラグロマンという都市伝説的な現象に巻き込まれてていく、二話ほどで完結するエピソードが挟まる。
まず最初に皆さんと少し認識合わせをさせて欲しい。東方常秀は屑……ですよね。
康穂と脳内で付きあったことにしていたり、アイドルのグッズを買うために親に金をせがんだり、我が儘放題のまま成長している。ジョジョシリーズの味方は、大抵の場合、黄金の精神を持っている者だし、巻を進むにつれて成長していくものだが、彼には適用されないらしい。
そんな彼は屑故に厄介な存在・ミラグロマンに絡まれていく。
ミラグロマンというのは、紙幣の形になって個人に取り憑いていく独立型のスタンドである。スタンドとは言っているが、その紙幣は実際に使うことができるという変わった形のスタンドだ。
このスタンドにはルールがある。
ミラグロマンの紙幣を使った者は、金を減らすことができずどんどん増えていく。作中において常秀は、拾った財布から五十万を盗み、それを使って豪遊しようとする。だが使っても使っても金が減らず、逆に金が増えていき百万円から二百万円、さらに二千万というように増えていくのだ。
使うという行為のみならず、紙幣を燃やしても増えていく喜ばしい地獄絵図だ。
この経験を経て、彼も人として成長してくれることを願う。