※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
新ロカカカの枝を岩人間プアー・トムが手に入れてしまった。その枝を巡っての争いは激化し、常敏もその隙を狙う。戦いの決着はいかに!
感想などなど
第十八巻の感想にて、岩人間プアー・トムのスタンド「オゾン・ベイビー」の説明を『埋められた周囲を加圧して、ゆっくりとダメージを与えていくという能力』というように書いているが、これは正しくない情報であった。申し訳ない。
正しくは、『スタンドの射程範囲にある閉鎖された空間の空気を加圧する』というものである。ジョジョリオンの岩人間のスタンドは、かなりややこしい条件式のバトルだったが、これは……まぁ、分かりやすい方なのではないだろうか?
空気による加圧となると避けようがない。常敏のとっさの機転により、果樹園に火を放ったことで来ざるを得なかった岩人間プアー・トムと、豆銑・定助のバトルが幕を開ける。
このバトルを一言で説明するならば、『張ったりと根性の勝負』である。
枝を手にしたプアー・トムに対して、定助のシャボン玉に入って近づき、伸ばしたワイヤーで首の骨を折る力で締め付ける豆銑。直接触れている相手は、より強力に加圧できるらしく、首を締め付けられながらも加圧により攻撃する。こうして互いに顔を歪ませながら血反吐を吐くという先に死んだ方が負けという勝負になる。
そこに助けに入ったのが、同じくシャボン玉に入って距離を詰めてきた定助だ。しかし、近づきすぎては彼も豆銑と同じような目に遭うことは明らか。何とか距離を取ったまま、彼を攻撃する策を考える。
そこで取り出されたのが、果樹園に実っていたイチイの実……の種である。どうやらイチイの種には毒性があるらしく、ワイヤーで締め付けられ動けないプアーの口に、その種を突っ込む。
毒は瞬時に効力を出し、苦しみ出すプアー。
しかし先に力負けしたのは豆銑であった。加圧で顔がひしゃげている……死んだよね、これ……まぁ、ジョジョだしなぁ……。
毒で苦しみながらも逃げ出すプアーを追いかける定助。この追いかける過程で、枝を持って有利なはずのプアーが必死に命乞いをし、「カネをやる……」「そこで寝てろよォォォーッ!」と無様な姿が面白すぎる。
ドドドドドドドド
というジョジョ特有の効果音と共に、覚悟を決めた定助が格好いい。
そんな戦いの末に枝を手に入れたのは……。
枝を手に入れた人物が判明するのが、この第十九巻における一番の盛り上がりだと思うのでネタバレを避けるために断言は避けるとして、舞台は病院へと移る。
そこでは常敏の妻である東方密葉は、自身の胸を素晴らしい形にするために病院で治療して貰った過去が明らかになる。しかしその代償として、歯が岩のようになってしまった。それを治療して貰うと、次は頭皮が岩のようになってしまい、それを治療して貰いに来たようだ。
もう察することは容易だが、彼女を治療した羽伴毅は岩人間で、ロカカカの実を治療に使っていたようだ。そんな彼が密葉に提示した治療費は二億円。これまでの胸や歯に関しても、それくらいの治療費は請求されていたのかと思うと、常敏が不憫に思えてきた。
そんな彼女に対して、「あなたは健康体なんですよ」と念を押す羽伴毅が印象深い。
そうして治療を受けて、足が岩のようになってボロボロと崩れていく密葉を、偶然にも目撃してしまった康穂。急いで定助に連絡し、ロカカカに関する何かが病院にあることを話す。
そうして病院にて、羽伴毅と定助達のバトルが始まっていくことになるのだが、それは二十巻からのお楽しみにしておこう。岩人間らしい価値観が光る話であった。