※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
病院に隠されていた「ロカカカの研究室」の記録を辿ると、顔写真のない「謎の院長」を探し始める。一方、つるぎの学校でも「院長」が姿を現して!?
感想などなど
最初に助けてくれた広瀬康穂や、豆銑礼という植物鑑定人も仲間に加わり、岩人間たちのボスまで、あと一歩のところまで辿り付いた。ペイズリー・パークの能力を使い、ロカカカの研究室に通っていたのは、たったの四人。
スタンド『ドクター・ウー』羽伴毅。
スタンド『オゾン・ベイビー』プアー・トム。
スタンド『アーバン・ゲリラ』下里良。
そして、顔写真の存在しない院長・明負悟。
これまでスタンドの出てきている三人については無力化している。となると残されているのは院長だけだ。こいつが黒幕に違いない。
そう考えた定助たちは、この院長を ”追跡する” ことに決めた。
ここからスタンド『ザ・ワンダー・オブ・ユー』との長い長い死闘が始まる。最初は顔も明かされていないこいつの正体が、スタンドの能力が明かされていくに連れ、「勝ち目がないじゃないか」と絶望的な気持ちになってしまうことを約束しよう。
明負悟。八十九歳。医学賞も受賞するほどに優秀な医者であり、実際の医療行為からは一歩引いた今は、名誉職としてTG大学病院の院長を務めている。しかし、その顔はペイズリーパークの能力を持ってしても分からないのだという。
生きていれば顔写真の一つや二つ、とくに院長という表に顔を出す仕事となれば、ネットに転がっていてもおかしくはない。それが見つからないというのは、一体どういうことなのか。
そんな院長の顔を見るために、定助達は病院内を駆け回り、八十九歳で腰の曲がった老人を追いかけた。
だが、「くどいようだが……89歳か?」と豆銑礼が言ってしまうくらい、院長に追いつけない。何故かその途中で病院のベットにぶつかったり、傘立てにぶつかったり、ガラスの扉にぶつかったりしてしまうのだ。
病院の外に出るころには、流血するレベルの傷を負っていた。
スタンドの姿は見ていない。一体どれが攻撃だったのか? そもそも攻撃だったのか? どれも傷を負った原因は、自身の不注意によるものか、運が悪かったとしか思えないような偶然の産物であった。
しかし、院長に近づけば近づくほど、身体に受けるダメージは大きくなっていく。車が突っ込んできたり、車が跳ね飛ばしたゴミが身体に突き刺さるレベルで突っ込んできたりと、偶然とは思えない明らかな攻撃へと転じている。
そして気付く。これは ”追跡する” ことをスイッチとして起動するスタンド攻撃だ、と。追いかけている間、院長は何もしていない。ただ歩いて距離を取っているだけ。それなのに、定助たちは勝手に倒れていく。
絵面としてはかなり地味だ。だが、それゆえに感じられる不気味さと絶望感。そもそも近づくことができない敵に、定助達がどのように挑んでいくのだろうか?
その死闘が行われている一方、東方家にも異常が起きていた。つるぎの小学校にて、つるぎの同級生が玄関の門に挟まれて怪我をするという事故が発生したのだ。門に挟まれるなどという普通ではあり得ないような事故だったため、その同級生に恨みを持っていたとされるつるぎが疑われた。
しかし、つるぎにはそのような事故を起こした覚えがなかった。
その学校の周辺では、つるぎの母――密葉が、院長の姿を目撃していた。が、それが今回の事故とどう繋がっていくのだろう。顔を一切みせず、ただ歩いているだけで敵を翻弄し、読者に絶望感を植え付けた明負悟。
この戦いに東方家がどのように絡んでいくのかも見所だ。