※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
元彼・透龍の写真から「新ロカカカの実」が東方家にあると知った康穂は家に向かう。一方、怪我人として病院に運ばれた定助だったが、院長のスタンド攻撃に襲われる。
感想などなど
「死の匂いが濃くなった」
この第二十三巻を読んで抱いた感想はそんな一言に集約される。ジョジョシリーズにおいて、ラストバトルを間近に控えた場面で誰かが死ぬことは多い。第三部のアヴドゥルしかり、第四部の億泰しかり、第五部のアバッキオしかり。誰かの死を乗り越えて、ボスとの戦いの覚悟を決めるという王道展開は、何度読んでも面白いものがある。
さて、このジョジョリオンでも誰かが死ぬのか?
この第二十三巻においては、二人ほどが死にかける。それぞれ場所も状況も理由も様々だが、それらに起因して戦う理由ができて立ち上がる人間がいるというのが面白いポイントであろう。
例えば。
吉良吉影の母ホリーさん。謎の奇病により内臓の一部が消失したりしていた彼女が、息子(の体が混じっている)定助のために行動し、院長に勝つための活路を見出してくれた。元々、病気により死にかけていたので億康やアヴドゥルと同列に語ることは違うかもしれないが、黄金の精神を持っているということは疑いようもない。
他にも。
「新ロカカカの実」の居場所が東方家だと知った康穂は、ペイズリーパークの力を使って家に侵入。しかし、東方常敏に気付かれて反撃に遭ってしまう。ペイズリーパークはかなりの強スタンドだと個人的に思っていたが、その力の差を感じさせない力業でねじ伏せてきた。
他にも東方家の長男を必ず殺してきた病が、つるぎを確実に蝕んでいた。その体は異形へと化し、死が刻一刻と近づいている。様々な問題に対するタイムリミットが、もうすぐそこまで迫っていた。
第一巻を思い出してしまう。定助は記憶がない状態で、自分の正体を知るための戦いを繰り返してきた。そして分かったことといえば、彼は新ロカカカの実によって、吉良吉影と空条仗世文の二人の体が混じったことによってできた存在だ。
吉良でもなければ空条でもない。全く新しい、過去を持たない人間だといえる。
そんな彼のことを吉良と呼び、息子として接し、院長に対する攻め手のなさに絶望していた彼に手を差し伸べ、最後の最後まで愛情を注いで意識を失ったホリーさん。彼女のことをただ一人の母親として認識し、改めて戦うことを決意した定助の覚悟した姿が最高に格好いい。
そしてホリーさんが残した言葉「絶対に追いかけるのは駄目よ。追いかけさせるのは良い」
それを手がかりにして、院長を待ち伏せることにした。果たして彼の作戦は上手くいくのか。ラストバトルが楽しみで仕方がない。
一方、東方家には東方家の一同がいるのは勿論、院長のスタンドに加えて、康穂まで参戦するという状況だ。この中で新ロカカカの実があることを知ってるのは、東方常敏とつるぎ、康穂に院長の計四人。ただ、正確な場所を知っているのは常敏とつるぎだけであり、二人はそれがバレないようにすれば勝ちと言ったところか。
そんな戦いの渦中に、何も知らないまま足を踏み入れてしまったのが、つるぎの母・密葉だ。彼女はベットの上にいる異形の存在、つるぎを見てしまう。そして便器で流されようとしていた康穂のスタンドも見つけてしまう。さらにさらに、窓の外に院長の姿を見つけた。
読者としてはそれら全ての情報が紐付いて理解できる。だが、密葉としてはただただ混乱しかない。院長がどうしてここに? つるぎがどうして異形の姿に? 康穂さんはどうしてトイレに流されようとしているの? と。
それに対して夫の常敏も何も答えない。彼にとって自分のやろうとしていることこそが正義である。だが彼は院長という敵の存在を軽んじすぎていた。彼のことを知らないからこそ、追いかけようという意思を抱かなかったからこそ、これまで激突されてこなかったのだ。
だが、そんな状況も変わっていく。
東方家による戦いは、ここからが本番なのだ。盛り上がってまいりました。