※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
新ロカカカの鉢の場所が明らかとなり、東方家一丸となって戦うこととなった。しかし、厄災の攻撃は常敏の想像よりも遙かに強力だった。その間、窮地に立たされていた康穂は透龍に助けを求める。その頃、定助は院長に自分を追わせることにしたが――。
感想などなど
漫画に限らず物語を読むとき、いつも脳内で情報を整理しながら読み進めている。この漫画を読むときも例外ではない。誰がどこにいて、どういう目的を持っているのか。これから何をしようとしているのか。その目的が互いに邪魔し合っていて、いる場所が重なった場合は戦闘が起きる。
この目的が曖昧な者達が多いと、自分としては混乱する。この目的がない者達――彼らの存在価値は何だと考えてしまう。物語として、彼らは死んだと同義と見なしてしまうのだ。
このジョジョリオンでいうところ、東方常秀、東方鳩、東方大弥、東方憲介である。彼らは家が襲われているにも関わらず登場しない。そう思っていた彼らが、この第二十四巻では無理矢理にでも前線にまで押し出されてくることとなる。
厄災の攻撃により姿が明るみとなってしまった新ロカカカの鉢。それを見つけ、スタンド「キング・ノッシング」で追跡を始める一家の主・憲助。そして映し出されたのは、一度は鉢を持って家の外に出た男・笹目桜二郎の姿であった。
愛人である資産二十億の女の家のプールで、その愛人と一緒に脳梗塞で死んでいることが怪死としてニュースに取り上げられていたのだ。そのことで常敏を問い詰めようとする憲助。「常敏 おまえこの男になにをやったんだ」と。
しかし、その問いに答えることなく、常敏は実の父である憲介を殺害した。
涙を流しながら、正しい道を進むために。
こうして戦わなければならない状況へと追いやられた東方家の一同。その間にも院長からの攻撃は続いていた。東方家と、定助、そして警察に連行された豆銑礼の元にも。
この院長の攻撃――攻撃という表現は正しくないように思う。そもそも作中の登場陣粒達も、この攻撃を厄災というように表現し、おそらく院長というスタンドの本体であろう透龍も、これを聖人ですら避けられない厄災というように説明している。
厄災……それはつまり、何かがぶつかってくるという現象に限定されない。
院長の悪事を暴いたとあるジャーナリストが、院長に対してこの病院の悪事を追跡してやると真正面から宣言していた。そのジャーナリストはその直後に死ぬことになるのだが、その死因は新ロカカカの実の果汁がちょっとばかり体内に入ったことによる事故死だった。
偶然による死。この現象はたまたま起きたことではなく、院長による厄災がジャーナリストに降りかかったと言うべきだろう。
また豆銑礼と同じ部屋に収監されていた犯罪者も、院長の姿を見たことで(正確には豆銑礼に見させられたのだが)、様々な運の悪い現象に遭遇し、最後は包丁で自らの首を刺して死んだ。
こうして漫画内で起きた事象を並べてみると、『ザ・ワンダー・オブ・ユー』の強さが分かりやすい。はっきり言って、勝ち目がないのだ。
だが、定助には勝つための策があるらしかった。彼は追跡するのではなく、院長自らに追跡させることで攻撃することにした。だが、本当に攻撃することができるのか。敵は厄災を纏った存在である。
はなはだ疑問ではあるが、定助のこれからの戦いを見届けていこうと思う。
ジョジョに伏線回収など期待したことなどなかったが、もしかしたらという期待も胸に、第二十五巻を買いに走ろう。