※ネタバレをしないように書いています。
絶望を断つ刃となれ
情報
作者:吾峠呼世晴
試し読み:鬼滅の刃 16
ざっくりあらすじ
岩柱・悲鳴嶼の柱稽古に訪れた炭治郎達は、丸太を担ぎ、滝に打たれて……過酷な修行をすることに。果たして炭治郎達は悲鳴嶼に認められるのか。そんな中、無惨は攻撃のために準備を進めていた。
感想などなど
第十五巻のオチを担っていた悲鳴嶼さん。ここまであまり出番もなく、恥ずかしながら名前の読み方も存じ上げていなかったブログ主であったが、この第十六巻において、悲鳴嶼という人間を強烈に印象づけられることとなる。
まず炭治郎達の行う柱稽古の内容は、①丸太担ぎ、②滝行、③岩を押して動かす、というシンプルな三つだけである。これまでは妙に奇をてらう内容で、鬼殺隊メンバーと柱が打ち合うというものが多かった。そもそも柱を訓練に参加させ、脈拍数・心拍数を上げるというのが目的の一つだったのだから、そちらの方が理に適っているように思う。
だが、悲鳴嶼さんはただ己の身を鍛え上げることを重視し、彼らの訓練を遠巻きに見ているだけで何かを教えるというようなことは一切しなかった。どうやら継ぐ子も一人も取っていないらしく、他人と距離を置いているらしいことが伺えた。
それでも彼の実力は本物であった。あの野生児・伊之助が、「鬼殺隊最強だ」と断言し、あの異様に鼻が良い炭治郎が「悲鳴嶼さんだけ匂いが全然違うんだよな」と言っていることからも、その屈強さは窺い知れるだろう。
そうは言われても、彼の戦闘している様子はこれまで描かれていない。それにどうやら目が見えないようである。目が見えないというのは、戦闘において大きなマイナスとなるのではないか?
そんな彼の異常な強さは、回想から既に分かってしまう。
彼は寺で身寄りのない子供たちを育てていた。血のつながりのない子供達ではあったが、皆が仲睦まじく助け合って暮らしていた。そんなある日、一人の子供が森で鬼に遭遇。自分が食われる代わりに、寺にいる子供達を差し出すと言ったのだ。
そして寺にやって来た鬼は、あっという間に子供を食べてしまう。たった一人残された少女を助けるため、悲鳴嶼は拳一つで鬼と対峙。夜が明けるまで殴り続けることで、鬼を滅したそうな。
……これが訓練をしていない二十歳にも満たない男がした所業である。
ただ一人生き残った少女は、「あの人は化け物」「みんなあの人が」「みんな殺した」と証言し、ただ一人その場に残っていた悲鳴嶼が連行されてしまう。そんな報われない男を助けたのが、産屋敷の主・お屋形様であった。
そんな過去があるからこそ、疑い深くなってしまったのだろう。人と距離を取っていたのだ。
さて、そんな悲鳴嶼さんとの柱稽古の後は急展開が待っている。
鬼舞辻無惨が産屋敷の場所を特定し、自ら単機で襲撃してきたのだ。最後に見た姿は子供だっただろうか。それとも女性だったか。性別も容姿も年齢もバラバラな無惨が、お屋形様に見せた姿は、二十過ぎの青年の姿であった。
そして始まる無惨と鬼殺隊による最後の戦い。上弦の鬼も、柱も、全員が集結しての総力戦。目が離せない戦いが、各所で勃発し、目まぐるしくも心掴まれるバトルが繰り広げられていく。
そんな戦いの舞台となるのは下弦の鬼を無惨が解体したり、上弦の鬼をお叱りしていたりと、無惨が便利に使っていた謎空間・無限城。