※ネタバレをしないように書いています。
「呪い」を解く物語
情報
作者:荒木飛呂彦
出版:集英社
ざっくりあらすじ
上空1000メートルを飛んでいる航空機の部品が、東方邸めがけて落下しようとしている時、院長と相対していた定助は、豆銑礼の残した言葉「見えないやつ」の意味に近づいていた――。
感想などなど
豆銑礼が死んだ――ジョジョシリーズにおいて死んだと思って生きていた(もしくは生き返る)は伝統芸能だが、流石に死んだだろというくらいの攻撃を喰らった。定助が空中に漂わせ、院長を突っ込ませる計画だった高速回転するシャボン玉が、腹を貫通したのだ。
シャボン玉が開けた穴から向こう側が見える。そんな傷を負いながらも、彼は勝つためのヒントを教えてくれた。定助が出すシャボン玉には、定助ですら気付いていない「見えないやつ」がある。それも高速回転している……と。
それを聞いた定助は、その意味を掴めずにいた。なにせ定助ですら気付いていないと言うではないか。気付くこと自体が無理という話である。
そんな現状、かなり追い詰められている。院長を追い詰める策は、既にバレてしまった。ここから挽回の策があるかと言われれば、ない。定助は研究室にあったロカカカの実の研究成果である薬を、一つずつ破壊していくことで、院長に近づいてくるように仕向けた。
だが院長の逆なでするような言動――「広瀬康穂が今、東方邸にいるぞ」「彼女はもうすぐ死ぬぞ。厄災のジョン判だ」「追跡しないという簡単なことすらできないのか」怒りは院長に向いている。薬が入っている試験管を蹴った破片が、定助の首に刺さる。
少しずつではあるが近づいてくる院長に、思わず蹴りを入れようとする。しかし、その蹴りが入ることはなく、定助の肩や腹部に机の破片が刺さって貫通。院長はただ近づいているだけなのに、定助の傷ばかりが増えていく。
一方的なスタンドバトルだ。勝ち目は……ない。
一方、康穂達の前には透龍が姿を現していた。康穂はもう既に本体が彼であるということを見抜き、これまで自分の前に現れていた彼が岩人間であるということも理解し、そして厄災の流れと戦うことを決意している。そこに迷いは感じられなかった。
そんな彼女は第二十五巻のラスト、虹村京に電話をかけた。これが透龍の攻略に近づくはず……なにせ彼女達のいる東方邸に、上空1000メートルの高さから航空機の破片が降り注ごうとしていたのだから。
厄災が牙を向いていた。ピンチではあるが、逆説的に透龍攻略に一歩近づいたと言えなくもない。虹村京が、このピンチを脱する鍵を握ることになる。彼女のスタンドは『ボーン・ディス・ウェイ』。スタンドの姿は黒いライダーを模している。能力は『対象者が何かを開けた時、現れて強烈な冷気で攻撃する』というもの。
初登場は第四巻。彼女のスタンド能力にはかなり苦しめられた記憶がある。
だが、彼女が助けに来たとしても、院長に攻撃が当たるとは思えない。なにか助けられるとも思えない。
……とそんなことを思うかもしれない。
これまで戦闘に関わってくることもなく、院長とのバトルの最中も蚊帳の外であった。しかし、彼女は最後の最後で重要な役割を担ってくれた。その死に様はとてもあっさりとしているが、彼女の持ってきたバトンは、たしかに定助に渡った。
ここからである。定助のターンは。
さて、この第二十六巻を読んだ人間として語りたいのは、画の迫力である。数々の人々の犠牲と共に渡されたチャンスを掴み取り、院長の眼前にまで迫ったシーンは、その格好良さに痺れた。
院長のスタンド造形のセンスに改めて感動しつつ、血だらけになりながら、限界は既に来ているだろう体を引きずっている定助。「ここで決めろ!」と、「ここしかない!」と康穂と共に叫んでしまった読者もいるかもしれない。
いよいよ終わりは近い。最高のラストバトルである。