工大生のメモ帳

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ブギーポップ・パラドックス ハートレス・レッド 感想

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作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまで(出版順)のネタバレを含みます。

<赤の傷物>と<炎の魔女>

情報

作者:上遠野浩平

イラスト:緒方剛志

ざっくりあらすじ

生命を止められた被害者達。死んだものを操る謎の敵。容赦ない攻撃がどこからともなくやって来る。

悪を恐れず、善に怯まない少女・九連内朱巳と正義の味方・霧間凪が出会い、奇妙な因縁の物語が幕を開ける。

感想などなど

さてブギーポップも十冊目。あまり長すぎるシリーズだと集めるのが面倒くさくて諦めるのがほとんどなのですが、ブギーポップシリーズは飽きることなく集めることができています。まぁ、部室に大半が置いてあったので、集めるのが楽だったというのもありますが。

この調子で書き進めていって、最新作に追いつくのは一体いつになるんだか……。それはさておき、書き進めていきましょう。

毎回時間軸や主人公が変わってきますが、今回は時間軸が大分分かりにくい。しかし、統和機構の存在についてやブギーポップに関して重要そうな話がかなり盛り込まれています。

しかし、如何せんぼんやりとしすぎていて、「何か確信をついてるんだろうなぁ……」という感想しか抱けませんでした。これまでの話やこれから続く話を合わせてようやく理解できるんでしょうが。

 

毎回「世界を滅ぼすことができる能力を抱いてしまった人」が巻き起こす事件の中で、ブギーポップが関わりを持った話です。では今回は ”誰が” ”どんな能力” を持ってしまい、 ”どんな事件” を引き起こしてしまうのでしょうか。

”誰が” の部分は、後半まで明かされないので、ネタバレ避けのため語らないでおくとして、”どんな能力” と ”どんな事件” かは語って起きましょう。

まず事件について。

起きた事件は「大勢の人達が意識を失って目を覚まさなくなってしまった」ことが事件の、ほんの少しの小さな始まりです。病院で治療もとい調査をしているようですが、現代の医療ではどう頑張っても意識は戻ってこない模様。

一人だけならばもしかすると統和機構にも気づかれなかったかもしれません。しかしあまりに大勢が意識を失っているので残念ながら察知され、今回のメインキャラである九連内朱巳が送られてくるのですが、それは後で書いていきます。

では犯人は一体どのような能力を用いて、この事件を引き起こしたのでしょうか。

これを語ってしまえば犯人丸わかりなので、ぼんやりとだけ書いておきましょう。まぁ、本編でも説明がかなり漠然としているのですが。

人が何故生きているのか? 人として子孫を繁栄させるため? 生きる意味を探すため? 死ぬため?

かなり哲学的な話ですが、要は ”生きる” ことを奪うということなのでしょうか……?

うーん、まぁ、こういった所もこの作品の魅力です。輪郭のぼやけた世界観を楽しむことも大切ですね。

タイトルのハートレス・レッドでもあるように、”心” が能力や作品内での主題となっています。だからこそそういった漠然とした哲学的な話がかなり出てきますので、苦手な人は苦手かも知れません。

 

さて今回の作品の魅力はこのキャラクター・九連内朱巳に詰まっているといっても過言ではありません。彼女は統和機構の主要人物でありながら、高校生であるという異様な人物です。

さらにさらに、恐ろしいことに無能力者です。今までの作品で統和機構側の人間が度々登場していますが、みんながみんな何かしらの能力者であることから、その異様さが分かっていただけるでしょう。

基本的に統和機構のやっていることと言えば、能力者の殺害や調査ですので、能力を持っていない人間は全くもって役にたたないはずなのです。

しかし、九連内朱巳は無能力者として、今回の事件の調査にあたります。彼女の人の心を失ったような言動をしていながら、人としての心を捨て切れていない言動がたまりません。本作を読んだ人は彼女のことが好きになってしまうのではないでしょうか。

そんな彼女と同じく、事件の犯人を ”正義の味方” として追いかけていたのが、”炎の魔女” こと霧間凪です。当然事件の犯人を追いかけていれば、互いに存在に気がつきます。

正義の味方として行動する霧間凪と統和機構側の人間・九連内朱巳の二人が出会い、事件の犯人を見つけ出した時、一体どうなるのか? そこには熱い人間ドラマが繰り広げられているのでした。

 

ブギーポップの立ち位置は相変わらず、世界の敵が現れたときに自動的に現れる存在です。今回はその世界の敵とは何なのか? が漠然とではありますが、敵とブギーポップの会話によって示されています。

今まで分からなかったブギーポップの存在意義。誰も突っ込むことのなかったことに、話は展開していきます。どうしてもこれからの物語に期待せずにはいられません。

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