※ネタバレをしないように書いています。
男(モブ)に厳しい世の中です。
情報
作者:三嶋与夢
イラスト:孟達
試し読み:乙女ゲー世界はモブに厳しい世界です 4
ざっくりあらすじ
ゲームの続編の舞台であるアルゼル共和国に、留学生としてやってきたリオンとマリエ(と愉快な王子達)。そこでもまた世界の危機が訪れるということで、妹のゲームの知識で攻略を試みるが、一人っ子であるはずの主人公が双子になっていて――
感想などなど
ゲームは無事にエンディングを迎えた。公国との戦争による世界の崩壊は、リオンやオリビア達の活躍によって回避され、リオンは波風一つ立たない平穏な日常を手に入れた……という訳にはいかない。
まず彼は二人の女性と結婚させられた。ゲームの主人公・オリビアと、ゲームの悪役令嬢・アンジェの二人である。彼女らはリオンのために奮闘した。それは全て、彼を愛しているからこそ。男なら責任を取らねばなるまい。
また酷い女尊男卑社会となっていた理由も明かされた。どうやら貴族が実権を握る社会体制を長い年月をかけて崩すため、このような状況を作り出したということらしい。回りくどい方法ではあるが、現実にとても上手く回っていた。このままいけば体制は崩れ、民主主義国家が誕生するのも時間の問題だったかもしれない。
というように、それに加えて自分がプレイしたゲームとは、状況が少しずつ異なっていることに困惑していた。しかし、それは全て続編で描かれていたことだと(元)妹のマリエに教えられる。ついでに続編は、アルゼル共和国という海を渡った先にある軍事国家であり、そこでもまた男女の色恋によって世界の命運が左右されるとのことらしい。
「それでは困る」とオリビアとアンジェを国に置いて、アルゼル共和国へと飛行船を飛ばし、ついでに留学と称して面倒ごとを押し付けられる形で、マリエと馬鹿王子も同行させられることとなってしまった。
知ってはいたが、この馬鹿王子達は本当に困ったものだ。金は地面から何もせずとも生えてくるものだと思っているとしか考えられない、金銭感覚の狂いによって、一か月の生活費を花束に変えて一日で消費してしまう。そして自分たちで金を稼ぐために働こうという考えが出てこない狂気っぷりには、マリエも辟易として溜息を超えて悲鳴が出てくる。
そんなマリエから、続編のゲームの情報を絞り出せるだけ絞り出し、さっさと攻略しようとするのだが、そう簡単ではなかった。
一人っ子だったはずの主人公が双子だったのだ。
ゲームの流れとしては、この国で実権を握っている六大貴族の男子の一人と、主人公が愛を育むことでバットエンドを回避できるようになっているらしい。つまりは主人公と男子達の仲を取り持つことが、今回リオンがすべきことである。しかし、その主人公と思われる人物が二人いたため問題となっている。
主人公候補二人の女子の名前は、それぞれノエルとレリア。髪型はそれぞれサイドテールで同じ。姉であるノエルは快活で明るい感じの女子で、妹のレリアはお淑やかで要領の良く何でもこなす感じの女子というように、かなり対極にいる。
ゲームの性格と似通っているのは、姉のノエルのようだ。しかし攻略対象の一人【エミール・ラズ・プレヴァン】と付き合っているようだ。これで彼女がゲームの主人公であれば、順調にゲームを攻略できているということになるのだが……ゲームの悪役令状は姉のノエルに絡んでいるというのでややこしい。
とりあえず外国の貴族として丁重(?)にもてなされたリオンの世話係として、主人公候補のノエルが抜擢されていた。こうして彼女と仲を深めつつ、「どっちが主人公なのか?」を見極めていくこととなる。
まぁ、仕事がそれだけならば楽だった。最悪、もう既に彼氏がいるレリアは放っておいて、ノエルを誰かとくっつけるようにすれば問題は回避できる。しかし、この国の六代貴族もまた性格が悪い曲者揃いだった。
たとえば。
六大貴族のフェーヴェル家出身の次男、【ピエール・イオ・フェーヴェル】は正真正銘の屑である。彼の屑行為を挙げていくとキリがないし、胸糞も悪いのだが、一つあげるとすればマリエの取り巻きである馬鹿王子達をボコボコにしたことだろうか。馬鹿王子達が馬鹿なことをした結果ならば、幾らか同情の余地もあるのだが、如何せんボコボコにした理由の一つが、王国と戦争になれば手柄を立てられるというものなのだから気色が悪い。
そんな彼と並び立つ屑はバリエル家の跡取り【ロイク・レタ・バリエル】である。彼は第四巻では大人しいのだが、次巻以降ではとんでもないことをする。そのとんでもないことの片鱗として、ノエルの彼氏であることを自ら周囲に言いふらしている。ちなみにノエルはロイクと付き合っていないし、むしろ嫌いであると公言している。
他にもたくさん屑はいる。馬鹿王子達は可愛かったのだなという風に感心すらする。それに馬鹿王子達も少しずつ成長……してるかな……どうだろ……。
忘れてはいけないがリオンも屑である。それが女性関係ではないことはせめてもの救いであろう。浮気はしないだろうし……しないよね? と不安になるような展開が続いていくことをネタバレしておこう。
屑でもモブでも、モテるものはモテるのだ。